睡眠時無呼吸症候群の治療法の一つにCPAPがあります。興味はあるけど副作用が心配という人も多いのではないでしょうか。この記事ではCPAPについて副作用やデメリットを中心に解説します。
CPAPとは?睡眠時無呼吸症候群(SAS)の標準的な治療法
CPAP(シーパップ)とは、睡眠時無呼吸症候群の患者に対して、圧力をかけた空気を鼻から喉に送ることで睡眠時にもしっかりと呼吸をできるようにする治療法です。以下の記事で詳しく解説しています。
CPAPとは?│MIZENクリニック豊洲内科・心療内科 (mizenclinic.jp)
※この記事では、副作用は体に影響が生じる好ましくない作用、デメリットは体に影響は生じないが好ましくない事象と定義します。
いびきや日中の強い眠気で受診し、医師からCPAP療法を勧められた方の中には、「毎晩マスクをつけるのは大変そう」「副作用が心配」という理由でためらっている方も少なくありません。
この記事では、CPAPの副作用とデメリットをデータに基づいて正直にお伝えするとともに、それぞれへの対処法と、治療を続ける意義についても解説します。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは何か
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に気道が繰り返し塞がることで呼吸が止まる病態です。1時間あたり5回以上の無呼吸・低呼吸が確認された場合に診断されます。国内の推定患者数は900万人以上とされており、その多くが未治療のままと言われています。
放置すると高血圧・心房細動・脳卒中などのリスクが高まります。そのため適切な診断と治療が重要です。
CPAPのメリット
CPAPのメリットには以下のようなものがあります。
・効果がすぐに現れる
CPAPは強制的に喉に空気を送り込むので確実に呼吸ができるようになります。薬とは違い、効果が現れるまでに時間がかかるということはありません。
・体へのダメージが少ない
CPAPは体の外側に装置を装着するだけの治療で、医薬品や手術など体そのものに物理的に影響を及ぼすものではありません。
・生存率が上がる
睡眠時無呼吸症候群を放置すると動脈硬化や心筋梗塞などの重篤な病気につながる可能性があります。CPAP治療をすることで睡眠時無呼吸症候群によるそれらの病気の発症を予防することができます。
CPAPで起こりやすい副作用と対処法

CPAPは安全性の高い治療法ですが、副作用の頻度は決して低くありません。英国の300人を対象とした調査では、96%の使用者が少なくとも1つの副作用を経験したことが報告されています(Kalan et al., 1999)。ただし重篤な副作用(入院が必要なもの)はゼロでした。
主な副作用は以下の3つのカテゴリーに分けられます。
鼻・口の乾燥感(最多:70%)
最も多い副作用で、口の乾燥を訴えた使用者は70%、鼻の乾燥は46%に上ります(Kalan et al., 1999)。就寝中の口呼吸や、持続的な気流による粘膜の乾燥が原因です。また、34.5%が鼻水、43%が鼻閉を経験しています。
対処法:多くのCPAP機器には「加温加湿器」を装着できます。温度と湿度を調整することで、乾燥は大幅に軽減されます。口呼吸が原因の場合は、フルフェイスマスクへの変更も選択肢です。鼻症状が強い場合は、医師の判断で鼻腔ステロイドスプレーを使用することもあります。
マスクによる皮膚の圧迫・不快感(52〜54%)
マスクが顔に当たる部分に赤みや跡が残ったり、長期使用でかぶれが生じることがあります。マスクの不快感を訴えた使用者は54%、鼻の付け根の痛み・擦過傷は52%に報告されています(Kalan et al., 1999)。また26.8%が皮膚のアレルギー反応を経験しています。
対処法:マスクのサイズや形状を変える(鼻ピローマスク・鼻マスク・フルフェイスマスクなど)か、クッション素材を使うことで改善します。自己判断で調整せず、担当医や機器業者に相談しましょう。近年の機器はシリコン素材の改良が進んでおり、皮膚トラブルは以前より軽減されています。
機器の騒音・閉塞感(45%)
45%の使用者が機器を「かさばって騒がしい」と感じており、34%が騒音による睡眠障害を経験、39%がパートナーと別室で就寝するようになったと報告されています(Kalan et al., 1999)。
対処法:近年の機器は動作音が大幅に静音化されています。「ランプアップ機能」(徐々に圧力を上げる機能)を使うと入眠しやすくなります。使い始めの数週間は慣れるまで時間がかかることが多いですが、多くの場合は自然に適応します。
腹部の張り・げっぷ(空気嚥下症)
空気を誤って食道から飲み込む「空気嚥下症」が起こることがあります。腹部の張りやげっぷとして現れますが、頻度は比較的低いです(Kalan et al., 1999)。
対処法:機器の圧力設定を医師に相談のうえ調整することで改善するケースがほとんどです。
CPAPの主なデメリット
副作用とは別に、治療を継続するうえで現実的な「デメリット」も存在します。
毎晩の装着が必要で根本治療ではない
CPAPは「使用中は気道が開く」治療であり、SASそのものを治すものではありません。使用を中止すると症状は戻ります。たとえ1晩使用をやめるだけでも、日中の眠気や無呼吸指数(AHI)が悪化することが研究で示されています(Weaver et al., 2007)。
ただし、肥満が主因の場合は、体重を減らすことでCPAPが不要になるケースもあります。主治医と定期的に治療方針を見直すことが大切です。
機器の管理・持ち運びの手間
毎日のマスク洗浄、定期的なフィルター交換、出張・旅行時の持ち運びが必要になります。近年は軽量・コンパクトな機種も増えており、出張用の小型モデルも市販されています。
保険適用の条件と受診継続の必要性
CPAPは保険適用(3割負担で月額約5,000円程度)が認められていますが、毎月の受診と1日4時間以上の使用実績が必要です。使用実績が不十分な場合、保険適用が外れることがあります。
それでもCPAPを継続すべき理由
副作用やデメリットを並べると躊躇してしまうかもしれません。しかし、治療を続けることの恩恵は大きいことが、複数の大規模研究で示されています。

心血管イベントのリスクを低下させる可能性
フランスの5,138人を対象とした大規模コホート研究(追跡期間中央値6.6年)では、CPAP使用時間と心血管イベントの間に明確な用量反応関係が確認されました。1夜あたり6〜7時間使用したグループは、4時間未満のグループに比べて、心筋梗塞・脳卒中・心不全・死亡のリスクが25%低下(ハザード比0.75、95%CI: 0.62–0.92)しており、全死亡との関連も統計的に有意でした(Gervès-Pinquié et al., 2022)。
一方、ランダム化比較試験では心血管イベントへの効果が示されなかったものもあります(McEvoy et al., 2016のSAVE試験など)。ただしこれらの試験では参加者のCPAP使用時間が平均3時間前後と短かったことが指摘されており、前述のコホート研究は「実際に十分使えた患者」での効果を示している点で重要です。
日中の眠気・生活の質が改善する
7つの睡眠センターで行われた研究では、CPAP使用時間が長いほど日中の眠気が改善する線形の用量反応関係が確認されました。主観的眠気(エプワース眠気スケール)の改善には1夜4時間以上、日常機能の改善には7時間まで継続的な効果が認められています(Weaver et al., 2007)。
「朝スッキリ起きられる」「日中の眠気がなくなった」という実感を得られた患者さんほど、治療継続率が高くなります。使用開始後2〜4週間で効果を実感できることが多いです。
継続率を上げるためのコツ
- 副作用を感じたら我慢せず早めに医師に相談する
- 使用データを定期的に確認し、機器の設定を最適化する
- マスクのフィット感を定期的に見直す
- 旅行・出張時も機器を持参する習慣をつける
- ランプアップ機能を活用して入眠しやすくする
CPAPが合わない方への代替治療
CPAPが身体的・心理的に継続困難な場合、以下の代替治療を医師と相談できます。
口腔内装置(マウスピース)
就寝時に装着するマウスピースで下顎を前方に固定し、気道を広げる治療法です。軽症〜中等症のSASに適用されます。CPAPほどの効果は期待しにくいですが、装着感が比較的よく持ち運びも容易です。歯科医師による作製が必要です。
外科的治療・生活習慣の改善
扁桃肥大・鼻中隔弯曲など解剖学的な原因がある場合は外科手術が選択されることがあります。また、肥満が原因の場合は体重を5〜10%減らすだけで症状が改善するケースもあります。さらに「仰向けで寝ると症状が悪化する」体位依存性SASには、横向き寝を維持する体位療法が有効なことがあります。
CPAPに不安があれば、まずは医師に相談を
CPAPには96%の使用者が何らかの副作用を経験するという現実がある一方で、適切に使用すれば日中のパフォーマンス改善と心血管リスクの低減が期待できる治療法です。「副作用がつらい」「続けるべきか迷っている」という場合も、自己判断で中断せずに担当医に相談することが大切です。マスクの種類変更や圧力の調整など、対処できることは多くあります。
SASの検査・治療の詳細については睡眠時無呼吸症候群の診療案内もあわせてご覧ください。
CPAPの副作用が気になる方、
使い続けるか迷っている方もまずはご相談ください。
夜間・土日も対応しています。
または、自宅・職場から
睡眠時無呼吸症候群の検査・治療について詳しくは睡眠時無呼吸症候群の診療案内もご覧ください。
※ 各院の診療時間はリンク先でご確認ください
参考文献
- Kalan A, Kenyon GS, Seemungal TAR, Wedzicha JA. (1999). Adverse effects of nasal continuous positive airway pressure therapy in sleep apnoea syndrome. The Journal of Laryngology & Otology, 113(10), 888–892. https://doi.org/10.1017/S0022215100145517
- Weaver TE, Maislin G, Dinges DF, et al. (2007). Relationship between hours of CPAP use and achieving normal levels of sleepiness and daily functioning. Sleep, 30(6), 711–719. https://doi.org/10.1093/sleep/30.6.711
- Gervès-Pinquié C, Bailly S, Goupil F, et al. (2022). Positive airway pressure adherence, mortality, and cardiovascular events in patients with sleep apnea. American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine, 206(11), 1393–1404. https://doi.org/10.1164/rccm.202202-0366OC
- McEvoy RD, Antic NA, Heeley E, et al. (2016). CPAP for prevention of cardiovascular events in obstructive sleep apnea. New England Journal of Medicine, 375(10), 919–931. https://doi.org/10.1056/NEJMoa1606213
- 日本呼吸器学会・日本睡眠学会合同ガイドライン作成委員会. (2020). 成人の閉塞性睡眠時無呼吸診療ガイドライン2020. 日本呼吸器学会.