「CPAPってひと月いくらかかるの?」「検査費用を含めると最初にどれくらい必要?」——シーパップ(CPAP)治療を始める前に、費用面が気になる方は多くいらっしゃいます。
結論から言えば、保険が適用された場合の月額自己負担は3割負担で約4,200〜4,500円です。1割負担なら約1,400〜1,500円と、負担割合によって大きく異なります。
この記事では、負担割合ごとの月額シミュレーション、検査から治療開始までのトータルコスト、そして「在宅で行う精密検査」が費用面でどれほど有利かを、診療報酬点数をもとに解説します。さらに、CPAPを続けることが長期的な医療費を下げるという最新のエビデンスもあわせてご紹介します。
CPAPの保険が適用される条件とは?
CPAP(持続陽圧呼吸療法)は、1998年から健康保険の適用対象となっています。厚生労働省の調査によると、現在約65万人がCPAP治療を受けています(厚生労働省, 2021)。ただし、保険が適用されるには一定の診断基準を満たす必要があります。
検査の種類と適用基準(AHI値)
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診断には、AHI(無呼吸低呼吸指数:1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数)を測定する検査が必要です。検査の種類によって、CPAP保険適用となるAHI基準が異なります。
| 検査の種類 | CPAP保険適用のAHI基準 |
|---|---|
| 簡易検査(自宅) | AHI ≥ 40 |
| 精密PSG検査(在宅または入院) | AHI ≥ 20 |
AHIが20〜39の場合は、簡易検査だけではCPAPの保険適用を受けられません。この場合、精密PSG検査(ポリソムノグラフィー)が必要になります。
月1回の受診義務
保険適用のCPAP治療を継続するには、月1回の定期受診が必要です。受診時にCPAPの使用状況データを確認し、医師が治療の継続を判断します。定期受診を怠ると、保険適用が停止される場合があります。
保険が外れる条件と注意点
保険が外れる最も多い原因は、使用率の低下です。以下の基準を下回ると、保険適用が停止されます。
- 1日4時間以上の使用を、月の70%以上(30日中21日以上)達成できない場合
- 月1回の定期受診を行わない場合
保険が外れると、翌月からCPAPのレンタル・管理料がすべて自費となり、月15,000円前後の負担になります。保険を維持するためにも、「4時間以上・月21日以上」という基準を日常的に意識することが重要です。
月額費用のシミュレーション
CPAP治療の費用は、診療報酬点数(1点=10円)に基づいて計算されます。毎月の受診でかかる費用の内訳は以下のとおりです(2024年時点)。
月額費用の内訳(3割負担の場合)
| 項目 | 点数 | 3割負担の自己負担 |
|---|---|---|
| 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料2(C107-2) | 250点 | 約750円 |
| CPAP装置加算・レンタル相当(C165) | 960点 | 約2,880円 |
| マスク・ホース等 材料加算(C171-2) | 100点 | 約300円 |
| 再診料・処方箋料等(概算) | 約90〜150点 | 約270〜450円 |
| 合計(概算) | 約1,400〜1,500点 | 約4,200〜4,500円 |
月額の自己負担は約4,200〜4,500円が目安です。医療機関によって再診料・処方箋料の有無が異なるため、±数百円の幅があります。また、高血圧などの他の疾患の治療管理料が別にかかる場合もあります。
なお、年齢や所得によって負担割合が異なります。75歳以上の後期高齢者(1割負担)では月約1,400〜1,500円、70〜74歳で一定所得以上の方(2割負担)では月約2,800〜3,000円が目安です。
年間でいくらかかる?保険あり・なしの比較
3割負担で1年間治療を継続した場合の自己負担は、年間約50,000〜54,000円(月平均約4,300円)です。
一方、保険が外れて自費になると月約15,000円、年間約18万円の負担になります。保険を維持することで、年間約13万円の節約になります。使用率の基準(4時間/日・月21日以上)を守り続けることには、健康面だけでなく経済面でも大きな意味があります。
検査から治療開始までのトータルコスト
CPAP治療を始めるには、まず診断のための検査が必要です。検査の種類によって費用が大きく変わるため、どの検査が必要かをあらかじめ理解しておくことが重要です。
簡易検査の費用(自宅で実施)
医師がSASを疑った場合に最初に行う簡易検査は、自宅で実施できます(D237 携帯用装置、720点)。3割負担での自己負担の目安は以下のとおりです。
- 簡易検査のみ:約2,200円
- 初診料・診察料を含む場合:約5,000〜7,000円
簡易検査でAHI ≥ 40が確認できれば、そのままCPAP治療に進めます。AHIが20〜39の場合は、保険適用のためにPSG(精密検査)が必要です。
在宅PSG検査と入院PSGの費用比較
PSG(ポリソムノグラフィー)は睡眠の精密検査です。従来は1泊2日の入院が必要でしたが、現在は在宅でも精密PSGを保険適用で受けられます(D237 ロ:その他、3,570点)。

CPAPの費用や在宅PSG検査について、
詳しくは各院の睡眠治療ページをご覧ください。
※ 各院の診療時間はリンク先でご確認ください
CPAPを続けると、日常生活はどう変わる?
月4,000円台の費用を「高い」と感じるかどうかは、治療によって何が変わるかにかかっています。ここでは、CPAPをきちんと使い続けた場合に起きる変化を、患者さん目線でお伝えします。
朝の眠気が取れて、日中のパフォーマンスが変わる(Weaver et al., 2007)
「眠れているはずなのに日中眠い」「会議中に意識が飛ぶ」——SAS患者さんによく聞かれる悩みです。Weaver et al.(2007、Sleep)の研究では、CPAPを使い始めてから3か月後に66%の患者さんで日中の眠気が正常範囲に改善したことが報告されています。
改善の度合いは使用時間に比例していました。1日4時間以上の使用で眠気の指標(ESS)が改善し始め、7.5時間以上になると仕事・家事・人間関係といった日常生活の機能全般が回復したと報告されています。「寝た気がしない朝」が変わることは、治療を続けるうえで多くの方が実感しやすい最初の変化です。
突然の入院や救急受診が減る(Sterling et al., 2024)
CPAPを十分に使えている方は、そうでない方と比べて救急外来への受診が約3割、入院が約3割少ないことが、17万人以上を対象とした研究で示されています(Sterling et al., 2024、Journal of Sleep Research)。
「突然入院することになった」「救急車を呼んだ」——こうした出来事は、本人の体だけでなく、家族の生活にも大きな影響を与えます。CPAPを続けることは、そのリスクを下げることにつながります。
心筋梗塞・脳卒中が起きにくくなる(Gervès-Pinquié et al., 2022)
SASは睡眠中に繰り返す低酸素状態を通じて、心臓や血管にじわじわとダメージを与え続けます。5,000名以上を追跡したフランスの研究では、CPAPを1日6時間以上使用している方は、心筋梗塞・脳卒中・不整脈などの重大な心血管イベントのリスクが25%低いことが示されました(Gervès-Pinquié et al., 2022、American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine)。
効果は使用時間が長いほど高く、保険維持の最低基準(4時間/日)を超えて、できれば6時間以上の使用を目指すことが勧められています。

放置するとどうなる?治療しないことのリスク
「いびきがひどいだけだから」と受診を先延ばしにする方もいます。しかし、SASは放置しても自然に治る病気ではなく、気づかないうちに体の各所にダメージが蓄積していきます。
高血圧・心疾患・脳卒中につながりやすい
睡眠中に呼吸が止まるたびに血中の酸素が下がり、交感神経が活性化して血圧が上がります。これが毎晩繰り返されることで、高血圧・不整脈・心肥大・脳卒中のリスクが高まることが国内外のガイドラインでも認められています。
Wickwire et al.(2020、Journal of Clinical Sleep Medicine)が28万人以上を対象に調べたところ、未治療のSAS患者は治療を受けている患者と比べて、入院や救急受診がはるかに多いことが確認されています。「SASを治さなかった結果として、別の病気で入院した」という経過は珍しくありません。
「気づいていない」だけで、症状はすでに進行している
同研究では、SASと診断される1年前の時点から、すでに入院・救急受診が増加していることも報告されています。SASは自覚しにくく、長年見過ごされがちです。しかし、自覚がないまま合併症が少しずつ進行していくことが、SASの特徴の一つです。症状が軽いうちに検査・治療を始めることが、将来の大きなトラブルを防ぐことにつながります。
高額療養費制度・民間保険は使えるか?
医療費の負担を和らげる制度として、高額療養費制度や民間の医療保険があります。CPAP治療においてこれらがどう活用できるかを整理します。
通常は高額療養費の対象外
高額療養費制度は、1か月の医療費(自己負担)が一定額を超えた場合に超過分が払い戻される制度です。一般所得者の上限は月約87,430円です。CPAP治療の月額費用(3割負担で約4,200〜4,500円)はこの上限に届かないため、通常は高額療養費制度の適用外となります。
PSG入院と他の医療費が重なる場合
ただし、PSG目的で入院した月に他の医療費も重なる場合は、同月の合計で高額療養費の対象になる可能性があります。同じ月に手術や他の入院があった場合は、加入している健康保険に確認することをお勧めします。なお、在宅PSG検査であれば入院費が発生しないため、この問題が生じにくくなります。
MIZENクリニックでCPAP治療を始める流れ
MIZENクリニックでは、睡眠時無呼吸症候群の検査から治療・月次管理まで一貫して対応しています。夜間・日曜の診察にも対応しているため、平日の日中に通院が難しい方でも受診しやすい体制を整えています。
受診から保険適用開始までのステップ
- 初診・問診:症状の聞き取り、簡易検査機器の貸し出し
- 簡易検査(自宅):就寝中に血中酸素濃度・呼吸パターンを計測
- 結果説明・診断:AHI ≥ 40であればCPAP処方へ。AHI 20〜39の場合は精密検査へ
- 在宅PSG検査(必要な場合):入院不要で精密な睡眠データを取得
- CPAP導入・保険適用開始:機器のフィッティング・使用指導を実施
- 月1回の定期受診:CPAPデータを確認し、保険診療を継続
在宅PSG検査で仕事を休まず診断できる
MIZENクリニックでは、入院不要の在宅精密PSG検査(保険適用)に対応しています。就寝時に専用の機器を装着して自宅で眠るだけで、脳波・睡眠ステージ・中枢性無呼吸を含む精密なデータが得られます。翌朝そのまま出勤でき、育児中・介護中の方や仕事の休みを取りにくい方にも受けていただきやすい検査です。
在宅PSGでAHI ≥ 20が確認された場合、入院PSGと同様にCPAP保険適用の根拠となります。睡眠時無呼吸症候群の診療から治療開始まで、入院検査を経ることなく一貫して進められます。
まとめ
- CPAP治療の月額自己負担は、3割負担で約4,200〜4,500円(1割負担では約1,400〜1,500円)
- 在宅PSG検査は入院PSGより安い負担で、仕事を休む必要もない
- CPAPを使い続けると日中の眠気が改善され、突然の入院・救急受診も減りやすくなる(Sterling et al., 2024、Weaver et al., 2007)
- SASを放置すると高血圧・心疾患・脳卒中のリスクが高まり、別の病気での入院につながることがある(Wickwire et al., 2020)
- 費用面・利便性ともに優れた在宅PSGを活用し、早期診断・早期治療が望ましい
参考文献
- Sterling, K. L., et al. (2024). PAP adherence and healthcare resource utilization and costs in a real-world population of patients with OSA. Journal of Sleep Research. [リンク未取得]
- Gervès-Pinquié, C., et al. (2022). Cardiovascular outcomes associated with CPAP therapy in patients with obstructive sleep apnoea: dose-response analysis of a French nationwide cohort. American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine. [リンク未取得]
- Wickwire, E. M., et al. (2020). Untreated OSA and health care utilization: findings from a large Medicare cohort. Journal of Clinical Sleep Medicine. [リンク未取得]
- Weaver, T. E., et al. (2007). Relationship between hours of CPAP use and achieving normal levels of sleepiness and daily functioning. Sleep, 30(6), 711–719. https://doi.org/10.1093/sleep/30.6.711
- Home-based polysomnography versus in-laboratory polysomnography for diagnosis of OSA: a systematic review. (2024). PMC11450293. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC11450293/
- 厚生労働省. (2021). 社会医療診療行為別統計. 厚生労働省.
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