脂質異常症の薬とは?コレステロールを下げる薬を飲むべきか解説!

目次

コレステロールを下げる薬は飲まないといけないの?

 みなさんは健診の際に「コレステロール値が高いですね」と言われたことはないでしょうか。「歳もとったし、みんななるんじゃない?」「今の時点で困っていないし運動や食事制限はしたくないな」という人も多いでしょう。しかし、コレステロールが高値である状態が持続すると、動脈硬化の原因になるといわれています。コレステロールを下げるために何をしたら良いのか、自分は薬を飲むべきなのかどうか、悩んでいる方も多いでしょう。そこで、今回はコレステロールを下げる薬について徹底解説します。

コレステロールの基準値

 まず、コレステロール値の基準値を確認しましょう。(動脈硬化性疾患予防ガイドライン2014版より)

・LDLコレステロール血症

 検査値:LDLコレステロール ≧ 140mg/dl

 (悪玉のコレステロール:動脈硬化を促進する)

・HDLコレステロール血症

 検査値:HDLコレステロール < 40mg/dl

 (善玉のコレステロール:動脈硬化を予防する)

・トリグリセライド血症(高脂血症)

 検査値:トリグリセライド(中性脂肪) ≧ 150mg/dl

  (中性脂肪は直前の食事の影響を受けるため、空腹時採血をする必要あり。)

 脂質異常症とは、血液中のLDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪が多すぎたり、HDL(善玉)コレステロールが少なくなる病気です。

では、コレステロールや中性脂肪が高いとどのような問題があるのでしょうか。脂質異常症を放っておくと、血管の動脈硬化が少しずつ進んでいき、心筋梗塞や脳卒中の原因になり得るといわれています。また、中性脂肪を溶かすホルモンは膵臓から出るため、高度に中性脂肪が高い場合には膵臓が過剰に働き、結果として急性膵炎になってしまうことがあります。

コレステロールを下げる方法

では、コレステロールを下げるために薬を服用した方がよいのでしょうか。これまでの研究では、LDLコレステロールと心筋梗塞、脳卒中との相関関係が示されており、薬によってコレステロールを下げた人ではこれらが減少したと報告されています。

心筋梗塞や脳卒中はがんと並んで、日本人の三大死因です。心筋梗塞や脳卒中は動脈硬化との関係が強く、動脈硬化は高血圧・糖尿病・高コレステロール・タバコがリスクとされています。つまり、長生きするためにはこれらのリスクを下げていくことが有効と考えられます。

 

 脂質異常症は、食事療法、運動療法、薬の服用によって、血液中の脂質の値を適切な範囲に、長い間にわたって保っていくことが必要な病気です。その中の一つの方法として今回は治療薬について詳しく説明していきます。

脂質異常症について、さらに詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

脂質異常症の治療薬とは?

 脂質異常症の治療には、食事療法・運動療法・薬物治療の3つがあります。一般的に、まずは3~6ヵ月の食事療法と運動療法を用いた生活習慣の改善を行います。生活習慣の改善を行った結果、総コレステロール値・LDLコレステロール値・HDLコレステロール値・中性脂肪値が目標値に至らず、また、動脈硬化や狭心症などの危険性が高いと判断された場合、薬物療法が検討されます。

薬の服用は、血液中の脂質の値を適切にするために行います。長期間に渡って行う必要があるため、今自分にはどのような薬が処方されているのか、あるいは、自分は今後どのような薬を服用する可能性があるのか、あらかじめ知っておくと良いでしょう。脂質異常症の治療薬には、コレステロール値を下げる薬、中性脂肪値を下げる薬、その両方を下げる薬、と大きく3つに分けられます。

体内で、コレステロールは図のように代謝されます。それぞれの薬がどの部分に作用しているのかも含めて見ていきましょう。

コレステロール値を下げる薬

コレステロール値を下げる薬には、以下の種類があります。

スタチン系製剤(HMG-CoA還元酵素阻害剤)①を阻害し②を促進

肝臓でコレステロールが合成されることを抑制し、主に血液中のLDLコレステロールを低下させ、動脈硬化などを予防する薬です。

肝臓ではHMG-CoA還元酵素などの働きによりコレステロールが作られ、作られたコレステロールは血液中へ移行します。スタチン系製剤はHMG-CoA還元酵素の働きを阻害し、肝臓におけるコレステロール合成を阻害します。その作用によって肝臓にあるコレステロールが不足し、不足分を補おうとする働きにより血液中のコレステロールが肝臓に取り込まれ、血液中のコレステロールが減少します。動脈硬化を予防する効果が認められており、脂質異常症の薬物療法として最初に処方されることも多いです。

主な副作用や注意点

筋肉が破壊される「横紋筋融解症」を発症する可能性がありますが頻度は0.01%と非常に稀です。その他の稀な副作用として、腎臓疾患の患者さんや高齢者の方に、ふくらはぎに筋肉痛があらわれることもあります。その他、腹痛や吐き気などの胃腸症状と肝障害が起こることもあります。上記のような症状がみられる場合は放置せず、医師や薬剤師に連絡してください。

 一般的な商品とその特徴

成分名 主な商品名 用法用量
ロスバスタチン クレストール 1日2.5~20mg/1回
ピタバスタチンカルシウム リバロ 1日1~4mg/1回
プラバスタチンナトリウム メバロン、メバン 1日10~20mg/1~2回
シンバスタチン リポバス、シンスタチン 1日5~20mg/1回
フルバスタチンナトリウム ローコール 1日20~60mg/1回
アトルバスタチン リピトール 1日10~40mg/1回

陰イオン交換樹脂(レジン)製剤 ③を阻害し②を促進

コレステロールを体外へ排泄する働きを促進する薬です。肝臓で生成されたコレステロールの一部は、消化液のひとつである胆汁酸に変わり、消化・吸収を助ける役割を終えたあと、小腸で吸収され再び肝臓に運ばれ再利用され、最終的に排泄されます。

陰イオン交換樹脂製剤を服用すると、内服後腸管に達した後、胆汁酸と結合して、胆汁酸の再吸収を阻害し、排出を促します。それにより肝臓のコレステロールが減り、減った分を補填するために血液中のコレステロールが肝臓に取り込まれ、血液中のコレステロールが減少します。すなわち、肝臓のコレステロール産生を阻害するスタチン系の薬剤とは異なる薬理作用により、血中のコレステロールを下げる作用があります。したがって、両者は併用することで効果が増強されます。

主な副作用や注意点

 体内に吸収されず便と一緒に排泄されるので副作用は比較的少ないのが特徴です。たまに便秘や腹部膨満感、皮膚症状などが起こることがあります。コレステロールだけでなく、一部の薬や食物とくっつき吸収が阻害される場合があるので、食前に服用します。

 また、長期で服用すると脂溶性ビタミンや葉酸の吸収が阻害され、ビタミン不足になることがあるので注意が必要です。

 一般的な商品とその特徴

代表的な薬剤名:コレスチラミン (商品名: クエストランなど)

服用方法:通常、水に4g(水100mLに懸濁)×2~3回/日を服用

代表的な薬剤名:コレスチミド (商品名: コレバインなど)

服用方法:通常、1.5g×2回/日(一日最大4gまで)朝夕食前に200MLの水とともに服用

小腸コレステロールトランスポーター阻害剤 ④を阻害

血液中のコレステロールには、肝臓で合成されたものと小腸で吸収されるものがあります。

この薬はコレステロール吸収を担う小腸コレステロールトランスポーターに結合することで、胆汁性および食事性コレステロールの吸収を選択的に阻害して、コレステロールの吸収を抑え、血中コレステロールを低下させる薬です。 先ほど紹介したスタチン系製剤(HMG-CoA還元酵素阻害剤)と併用することで、高い効果を期待できます。

主な副作用や注意点

比較的副作用は少ないといわれていますが、稀な副作用として横紋筋融解症やアナフィラキシー様症状、肝障害などが起こることがあります。一般的な副作用としては便秘、下痢、腹部膨満、腹痛や吐き気などの胃腸症状があります。相互作用は少ない方ですが、免疫抑制薬のシクロスポリンや、抗血栓薬のワーファリンの血中濃度に影響する可能性があるので併用に注意が必要です。

 一般的な商品とその特徴

代表的な薬剤名:エゼチミブ(商品名: ゼチーア)

服用方法:通常、10mg×1回/日を食後に服用

コレステロール値と中性脂肪値を下げる薬

ニコチン酸誘導体製剤

肝臓での中性脂肪・リポタンパク質の合成を抑制し、LDLコレステロール値を低下させる作用とともに、HDLコレステロールを増やす作用があります。

主な副作用や注意点

 ビタミンの一つであるため、副作用はあまりありません。顔がほてったり熱っぽかったりする症状が出ても、服用してから1~2週間でおさまってきます。

 一般的な商品とその特徴

代表的な薬剤名:トコフェロールニコチン酸エステル(商品名:ユベラN)

服用方法:通常、100~200mg/3回/日服用

 

代表的な薬剤名:ニコモール(商品名:コレキサミン)

服用方法:通常、1回200~400mg×3/日を食後に服用

 

代表的な薬剤名:ニセリトロール(商品名:ペリシット)

服用方法:通常、250mg×3/日を服用

中性脂肪値を下げる薬

フィブラート系製剤

中性脂肪の合成を阻害する薬剤です。 中性脂肪やLDLコレステロールを低下させ、HDLコレステロールを増加させる作用があります。ただし、それほど高い効果は期待できないことがあります。スタチン系製剤や抗血栓薬(ワーファリン)、糖尿病薬と併用すると悪影響を及ぼす可能性があるため注意が必要です。

主な副作用や注意点

 稀な副作用として横紋筋融解症がありますので、定期的に血液検査を受ける必要があります。筋肉痛や脱力感、尿の色が濃い茶色になるなどの症状が現れた場合には医師または薬剤師に連絡してください。

一般的な商品とその特徴

代表的な薬剤名:クロフィブラート(商品名:ビノグラック)

服用方法:通常、750~1500mg/日を2~3回に分けて服用

 

代表的な薬剤名:ベザフィブラート(商品名:ベザトールSR)

服用方法:通常、400mg/日を2回に分けて朝夕食後に服用

 

代表的な薬剤名:クリノフィブラート(商品名:リポクリン)

服用方法:通常、200mg×3回/日を服用

 

代表的な薬剤名:フェノフィブラート (商品名: トライコア、リピディル)

服用方法:通常、106.6mg~160mg×1回/日を食後に服用

 

代表的な薬剤名:ペマフィブラート (商品名: パルモディア)

服用方法:通常、0.1mg~0.2mg×2回/日を服用

EPA製剤

EPA(エイコサペンタエン酸)という魚の油などに含まれる成分から作られています。脂質の合成を抑制したり、血液を固まりにくくしたりする作用があります。

主な副作用や注意点

 血液を固まりにくくする抗血栓薬(ワーファリン)などの薬剤を服用中の人が併用する場合、出血しやすくなるので注意が必要です。

一般的な商品とその特徴

代表的な薬剤名:イコサペント酸エチル (商品名:エパデール)

服用方法:通常、900mg×2回/日、または600mg×3回/日を食後に服用

オメガ‐3脂肪酸

肝臓からのトリグリセライド分泌を抑制し、さらに血中からのトリグリセライド消失を促進することなどによりトリグリセライドを低下させます。そのほか、抗血小板作用により、血液を固まりにくくする性質もあります。

主な副作用や注意点

血が止まりにくくなるため、出血を伴う病気のある人は使用できません。(血友病、消化管出血、尿路出血、喀血、眼底出血など。) 副作用は少ないほうです。人によっては下痢を起こすかもしれませんが、重症化することはないでしょう。万が一、吐き気や発熱、皮膚や白目が黄色くなるといった肝臓の副作用が疑われる症状、あるいは鼻血など出血傾向がみられる場合はすぐに受診してください。

一般的な商品とその特徴

代表的な薬剤名:オメガ-3脂肪酸エチル (商品名:ロトリガ)

服用方法:通常、2g×1回/日を食直後に服用

 

コレステロール値を下げる薬を飲むときに気を付けるべきこと

 薬には治療の基本となる作用の他に、副作用が必ず存在します。これら脂質異常症治療薬にも様々な副作用が知られています。

 副作用の中には症状が進んでも放置し重症化することで死に至るものもあります。そのため初期症状が現れた時点で適切な処置をとることが重要です。

 それぞれの薬の副作用の初期症状を理解しておくことがとても重要ですので、医師と一緒に副作用についても確認し、初期症状を見逃さないようにしましょう。

コレステロールの治療をしたいと思ったらMIZENのクリニックへ

 実際に内服する方が良いのかどうかについては、年齢や生活習慣、病気への考え方などを総合的に判断して決めていきます。

 健診で異常を指摘されている方、動脈硬化がある可能性がある方など少しでも気になることがある方はぜひお気軽にご相談ください。

 

当院の強み

 1.働く人も通いやすく

 仕事終わりの時間に診療を行っていないクリニックが多いですが、MIZENクリニックでは診療時間を平日夜18時から22時としています。当院では昼間はお仕事で忙しくなかなか受診できない方々の健康を、夜遅くまで診療することでサポートいたします。

 2.全身の健康をサポート

当院には脂質異常症を専門とする医師に加え、心療内科など様々な領域を診ることのできる医師が揃っております。患者さんの身体面・社会生活面・精神心理面のすべての面から患者さんをサポートできます。例えば、他の疾患でかかっていても検査などで気になる部分があれば当院で治療を目指すことができます。

 3.ネット予約で待ち時間を短縮

 多くの医療機関では診察前や会計までの待ち時間が長いということが通院から足が遠のく大きな理由の一つとなっております。当院ではスムーズな受付のために、予約をインターネットで事前に行って頂くことができ、予約された方から優先的に診察を受けていただいております。

 4.オンライン診療

 MIZENクリニックではオンライン診療を活用して通院負担を減らすことができます。詳しくは以下のオンライン診療のページをご覧ください。

  5.お薬の説明

 やはり、はじめて飲む薬は副作用やいつまで飲み続ければ良いのかなど、不安もあると思います。当院ではそれぞれのお薬の効果や副作用について丁寧に説明し適切なお薬を処方するよう努めています。何か疑問点があれば遠慮なくおっしゃってください。

 6.患者さんのご意見を丁寧に伺う

 当院では患者さんが何に困っているのか、どんな病気が考えられるのか、どんな治療法が患者さんにとって最適であるのかということを正しく判断していくために患者さんのお話を真摯に伺うことを心がけております。ネット予約やオンライン診療も行うことによって実際の診察の時間で深く患者さんに向き合うことを実現しております。一方的に治療を行うのではなく、一緒に考えていきたいと思っておりますので安心してご相談ください。

参考文献

 

>夜間内科 「MIZENクリニック」

夜間内科 「MIZENクリニック」

「MIZENクリニック」は、『働く人のための夜間診療内科』をコンセプトに、平日の夜17時30分から21時30分まで診察しております。 多様な専門性と診療方針の医師が、風邪などの日常病や、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病をはじめ、喘息、風邪、不眠、メンタルヘルスなどお困りごとに対して幅広くご対応させて頂きます。

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