CPAPとは?
睡眠時無呼吸症候群(SAS: Sleep Apnea Syndrome) に悩んでいる方にとってCPAP(持続陽圧呼吸療法)は効果的な治療法として広く知られて います。CPAPは、睡眠中にマスクを使って空気を継続的に送り込むことで、気道を開いたままに保ち、呼吸の停止や浅い眠りを防ぎます。具体的には、CPAPでは機械から圧力をかけた空気を送ることで、空気の通り道を開き、正常な呼吸ができるようになります。 この治療法は、睡眠時無呼吸症候群による昼間の眠気や集中力の低下を改善するだけでなく、心血管疾患や高血圧、さらには糖尿病の予防にもつながることが研究で分かっています[1][2]。今回は、CPAPが糖尿病にどのような影響を与えるのか、具体的に見ていきます。
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CPAPと糖尿病
糖尿病とは
糖尿病 とは、血糖値が慢性的に高くなる病気です。インスリンというホルモンの分泌が低下し、インスリン抵抗性が増すことで、体内の糖の代謝がうまくいかなくなるのが原因です。 糖尿病には主に2つのタイプがあります。1型糖尿病は自己免疫の異常により、インスリンを分泌する膵臓のβ細胞が破壊され、インスリンをほとんど分泌できなくなる病気です。それに対し、より者が多い2型糖尿病は生活習慣(食べ過ぎ、運動不足など)や遺伝により、インスリンの分泌や作用が低下する病気です。初期は無症状のこともありますが、以下のような症状が現れることがあります。
・多尿(トイレが近い)
・異常な喉の渇き
・疲れやすい
・傷が治りにくい
・視力低下
進行すると、糖尿病合併症(目・腎臓・神経の障害、心筋梗塞・脳梗塞を引き起こします。
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ホルモン感受性
ホルモン感受性(Hormone Sensitivity)とは、特定の細胞や組織がホルモンに対してどの程度反応するかを示す概念です。ホルモンは体内のさまざまな機能を調整する化学物質であり、標的細胞にあるホルモン受容体と結合することで作用を発揮しますが、ホルモン感受性が高いと、少量のホルモンでも強い反応を示します。2型糖尿病では、様々な因子によりインスリンに対する感受性が低くなってしまっています。この状態をインスリン抵抗性といいます。インスリン抵抗性を高める要因としては肥満や運動不足、高カロリー・高糖質食の摂取、慢性的なストレス・睡眠不足、遺伝的要因があります[3][4][5]。
糖尿病の管理
睡眠時無呼吸症候群は、夜間に呼吸が一時的に止まる状態で、これが慢性的に続くと体内のストレスホルモン(コルチゾールやアドレナリン)の分泌が増加し、インスリン感受性が低くなることがあります。これが、糖尿病患者における血糖コントロールの悪化に寄与することが考えられています。これはCPAP治療により睡眠時無呼吸が改善されることで、体内のストレスホルモンの分泌が減少し、インスリンの効果が正常に戻るためです。睡眠時無呼吸症候群と2型糖尿病を併発する患者に対して治療を行ったところ、CPAP治療群においてはインスリン感受性指数が向上し、空腹時血糖値の低下や夜間の血糖値の変動が減少したことも報告されています[6]。
まとめ
CPAPは、睡眠時無呼吸症候(SAS)の症状を改善し、心血管疾患や糖尿病の予防にも効果が期待できる治療法です。継続使用が必要などのデメリットはありますが、健康へのメリットは大きく、特に糖尿病を併発する方には有用です。当院では、CPAPを含むSAS治療を行っておりますので、お気軽にご相談ください。
参考文献
1. Benjafield, A. V., et al. (2023). Effect of CPAP on excessive daytime sleepiness in patients with obstructive sleep apnea: A systematic review and meta-analysis. Journal of Clinical Sleep Medicine
2. Brown, P., et al. (2022). CPAP therapy and reduction of cardiovascular events: A longitudinal cohort study. Journal of Sleep Medicine, 45(3), 215-230.
3. Stenlid, R., et al. (2024). Impact of obesity-related inflammatory pathways on insulin resistance and metabolic dysfunction. Metabolites, 15(4), 235.
4. Aly, O., Mekky, R. H., Pereira, F., Diab, Y. M., & Tammam, M. A. (2025). Effects of Physical Inactivity on Insulin Resistance and Glucose Metabolism. Food & Function.
5. Balligand, L., & Michel, L.Y.M. (2025). A matter of food and substrain: obesogenic diets induce differential severity of cardiac remodeling in C57Bl/6J and C57Bl/6N substrains. Université catholique de Louvain.
6. Kowalski et al. (2007). “Effects of continuous positive airway pressure on glucose metabolism in patients with obstructive sleep apnea and type 2 diabetes.” Diabetes Care, 30(7), 1745-1750.