自宅で睡眠時無呼吸のPSG検査を受けている様子

睡眠時無呼吸症候群は自宅で検査できる? 流れと精度をやさしく解説

  • 2026年6月13日
  • 2026年6月13日
  • SAS
SAS 自宅で睡眠時無呼吸のPSG検査を受けている様子

「いびきが大きい」「夜中に呼吸が止まっていると言われた」「日中なんだか眠い」——そう感じていても、検査のために入院するのは気が重く、ついそのままにしてしまう方は少なくありません。

実は、睡眠時無呼吸症候群の検査は、自宅でも受けられる時代になっています。

この記事でわかること
・自宅でできる睡眠時無呼吸症候群の検査の仕組みと精度
・検査結果(AHI)の見方と、その後の治療の流れ
・どんな症状がある方は早めに受診すべきか

いびきや日中の眠気が続く方へ──睡眠時無呼吸症候群とは

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に気道が繰り返し塞がり、呼吸が止まったり浅くなったりする病気です。

睡眠中に呼吸が止まると、血液中の酸素濃度が低下し(間欠的低酸素)、体は何度も覚醒に近い状態に引き戻されます。この繰り返しは交感神経を活発にし、血管の内側を傷つける酸化ストレスを引き起こすことが報告されています(Javaheri et al., 2017)。そのため、睡眠時無呼吸症候群は高血圧・不整脈・心不全・脳卒中などのリスクを高めることが知られています(Javaheri et al., 2017)。

中高年では男性の約34%、女性の約17%が診断基準を満たすとされ(Yeghiazarians et al., 2021)、決して珍しい病気ではありません。しかし、自分では「ただのいびき」と思い込み、診断を受けていない方が多いのも実情です。今後30年でこの病気を抱える人はさらに増加すると予測されており(Boers et al., 2025)、早めに気づくことが重要です。

受診のご予約 — 夜間・土日も対応

自宅でできる睡眠時無呼吸症候群の検査とは(簡易検査とPSGの選択肢)

「検査のために入院するのは難しい」という方のために、自宅で検査を受けられる選択肢が広がっています。自宅検査には、大きく2つのタイプがあります。一つは指先や鼻などのセンサーで呼吸や酸素の状態を調べる「簡易検査(HSAT:Home Sleep Apnea Test)」、もう一つは脳波なども含めて入院での精密検査(ポリソムノグラフィー、PSG)に近い項目を測定できる「在宅PSG」です。

睡眠時無呼吸の簡易検査と在宅PSGの比較図

米国睡眠医学会のガイドラインでは、いびきや日中の過度な眠気など、中等度から重度の睡眠時無呼吸症候群が疑われる典型的な症状がある場合、入院での精密検査(PSG)に加えて、技術的に十分な性能を持つ自宅検査機器(HSAT)を用いた診断が推奨されています(Kapur et al., 2017)。

簡易検査(HSAT)では、指先や鼻、胸などに小型のセンサーを取り付けて就寝するだけで、呼吸の状態・血液中の酸素飽和度・心拍などを記録できます。一方、在宅PSGでは、これらに加えて脳波・眼球運動・あご周りの筋電図なども記録できるため、睡眠の深さ(睡眠段階)まで自宅で評価することが可能です。検査キットは事前にクリニックから渡される、または検査会社から配送される形が一般的で、使用後は返却します。

自宅検査が向いていない場合もある

一方で、心臓や肺に重い病気がある方、神経や筋肉の病気で呼吸の力が弱い方、脳卒中の既往がある方、医療用麻薬(オピオイド)を服用中の方などは、簡易検査(HSAT)では正確な評価が難しいため、より詳細な検査(在宅PSGや入院でのポリソムノグラフィー)が推奨されています(Kapur et al., 2017)。持病がある方は、検査を申し込む前に医師に相談することが大切です。

自宅検査の流れ・受け方

実際に自宅検査を受ける場合、どのような流れになるのでしょうか。

一般的には、まず医療機関を受診し、問診やセルフチェックの結果から自宅検査が適しているかを判断します。適応と判断されると、検査キットを受け取り(来院または郵送)、就寝前に鼻のセンサー、指の酸素センサー、胸腹部ベルトなどを装着し、普段通りに1〜2晩ほど眠っている間の呼吸状態や血液中の酸素の状態を記録します。

検査終了後はキットを返却し、解析後に医師から結果の説明を受けます。結果が出るまでの期間は医療機関によって異なるため、詳しい流れは受診予定の医療機関に確認することをおすすめします。

当院では、症状や疑われる重症度に応じて2種類の自宅検査機器を使い分けています。

一つは「ウォッチパッド」で、手首に本体を、指先に小型のセンサーを装着するだけのシンプルな簡易検査(HSAT)です。末梢動脈の血流の変化・血中酸素飽和度・脈拍・体の動き・いびきなどを一晩記録します。装着が簡単で、初めて検査を受ける方にも負担が少ないのが特徴です(Philips WatchPAT300添付文書, 2021)。

もう一つは「ナイトグラフ」で、脳波・眼球運動・あご周りの筋電図に加え、呼吸の状態や血中酸素飽和度なども記録する、入院での精密検査(PSG)に近い項目を自宅で測定できる検査機器です。睡眠の深さ(睡眠段階)まで評価できるため、より詳しい情報が必要と判断された場合に用いられます(株式会社S’UIMIN ナイトグラフ製品資料)。

いずれの検査も、受診時に医師が検査をオーダーすると、検査機器が検査会社から自宅に直接配送されます。説明書に沿って自宅で1晩装着して測定したあとは、検査会社宛てに郵送で返却するだけで完了します。結果は次回の受診までにクリニックに届くため、受診時にあわせて医師から説明を受けられます。どちらの検査が適しているかは、症状や問診の内容をもとに医師が判断します。

簡易検査とPSG(精密検査)の違い・精度はどのくらい?

「簡易検査だけで診断は確定するのか」と気になる方も多いはずです。

簡易検査(HSAT)は、中等度から重度の睡眠時無呼吸症候群が疑われる方に対しては良好な診断性能を持つ一方で、偽陰性(本当は無呼吸があるのに「正常」と判定されてしまう)の割合が最大で17%程度に達するという報告があります(Cushman et al., 2026)。

このため米国睡眠医学会のガイドラインでは、簡易検査の結果が陰性・判定不能・技術的に不十分だった場合には、より精度の高い検査(ポリソムノグラフィー、PSG)を行うことが強く推奨されています(Kapur et al., 2017)。前述の「ナイトグラフ」のような在宅PSGは、入院せずにPSGに近い項目を測定できるため、こうした場合の選択肢の一つになります。

近年の研究では、簡易検査のスコアリング方法を見直すことで、PSGとの一致率が44.1%から89.7%まで改善したという報告もあり(Cushman et al., 2026)、簡易検査の精度を高める工夫が進んでいます。つまり、簡易検査は「まず調べてみる」第一段階として有用ですが、結果によってはより詳細な検査(在宅PSGや入院でのPSG)が必要になる場合があると理解しておくとよいでしょう。

診療案内

いびきや日中の眠気が気になる方は、
各院の睡眠治療ページもご覧ください。

検査結果(AHI)の見方と重症度

検査結果として必ず登場するのが「AHI(無呼吸低呼吸指数)」という数値です。

AHIは、睡眠1時間あたりに無呼吸(呼吸が完全に止まる状態)と低呼吸(呼吸が浅くなる状態)が何回起きたかを示す指標です。一般的には、AHIが5未満であれば正常、5以上15未満は軽度、15以上30未満は中等度、30以上は重度と分類されます。

AHIにもとづく睡眠時無呼吸の重症度分類

この重症度は、治療方針を決めるうえで重要な情報です。たとえば米国では、中等度以上のAHIを基準として、CPAP(持続陽圧呼吸療法)などの治療に対する医療保険の適用条件が定められており、AHIの数値が治療継続の判断にも関わってくることが指摘されています(May et al., 2023)。AHIの数値だけでなく、日中の眠気や血圧などの症状と合わせて、医師が総合的に評価します。

検査費用・保険適用はどうなる?

睡眠時無呼吸症候群が疑われ、医師が必要と判断した場合、自宅で行う検査も健康保険の対象になります。診療報酬は1点=10円で計算され、検査の種類によって点数が異なります(厚生労働省, 2026)。

「ウォッチパッド」のような簡易検査・携帯用装置は720点のため、3割負担では検査料だけで約2,160円が目安です。「ナイトグラフ」のような在宅で行うPSG(その他)は2,000点のため、3割負担では検査料だけで約6,000円が目安です(厚生労働省, 2026)。

ただしこれらはあくまで「検査料だけ」の目安であり、実際の窓口負担には初診料・再診料、検査判断料、入院を伴う場合の入院料・食事療養費などが加わるため、医療機関によって総額は異なります。詳しい費用は受診先の医療機関で確認することをおすすめします。

なお、海外の研究では、検査によって睡眠時無呼吸症候群と診断され、適切な治療(CPAPなど)が継続された患者は、未治療の患者と比べて医療機関への受診や緊急受診が減少し、結果的に医療費の削減につながったと報告されています(Sterling et al., 2024)。早めに検査を受けて適切な治療につなげることは、長期的には費用面でもメリットがある可能性があります。CPAPの保険適用の詳細についてはCPAPの保険適用と費用の解説記事もご参照ください。

検査でわかったら?その後の治療の流れ

検査によって睡眠時無呼吸症候群と診断された場合、どのような治療が行われるのでしょうか。

中等度から重度の睡眠時無呼吸症候群に対する第一選択の治療は、CPAP(持続陽圧呼吸療法)です。CPAPは、鼻に装着したマスクから空気を送り込み、気道が塞がることを防ぐ治療法で、米国睡眠医学会のガイドラインでも標準治療として位置づけられています(Patil et al., 2019)。

CPAP以外にも、減量や生活習慣の改善が症状の軽減につながることが報告されています。減量・運動・栄養指導などを組み合わせた介入を行ったところ、睡眠時無呼吸症候群の重症度(AHI)が有意に改善したという無作為化比較試験の結果もあります(Carneiro-Barrera et al., 2022)。また、横向きで寝ると無呼吸が軽減するタイプの方には、体位療法(仰向けを避ける工夫)が補助的に有効な場合があるとされています(Srijithesh et al., 2019)。治療法は症状の重さや体の状態によって異なるため、検査結果をもとに医師と相談しながら決めていくことが大切です。

こんな症状がある方は早めの受診を(受診の目安)

「これくらいなら大丈夫」と判断してしまいがちですが、次のような症状がある方は、自宅検査を含めた検査を検討することをおすすめします。

自分の無呼吸のリスクを簡易的にチェックする方法として、STOP-Bang質問票という8項目のセルフチェックがあります。いびき・日中の倦怠感・無呼吸を指摘された経験・高血圧・BMI・年齢・首回りの太さ・性別の8項目のうち、当てはまる項目が3つ以上ある場合、中等度から重度の睡眠時無呼吸症候群である可能性が高いとされています(感度93%)(Chung et al., 2016)。

また、睡眠時無呼吸症候群は高血圧・不整脈(心房細動)・心不全・脳卒中といった病気と密接に関連していることが、複数の研究で指摘されています(Yeghiazarians et al., 2021)。すでにこれらの病気を指摘されている方、血圧の薬を飲んでいるのになかなか血圧が下がらない方、運転中に強い眠気を感じることがある方は、放置せずに早めに医療機関で相談することをおすすめします。

睡眠時無呼吸のスクリーニング質問項目リスト

まとめ:自宅検査をきっかけに、睡眠の質を見直す

  • 睡眠時無呼吸症候群は、自宅でできる簡易検査(HSAT)や、PSGに近い項目を測定できる在宅PSGで調べることができる
  • 簡易検査は便利だが偽陰性の可能性があり、結果次第でより詳細な検査(在宅PSGや入院でのPSG)が必要になることもある
  • 検査結果のAHI値によって重症度が分類され、治療方針の判断材料となる
  • 診断後はCPAPや生活習慣改善(減量・体位療法など)が治療の選択肢となる
  • いびき・日中の眠気・高血圧などが気になる方は、まずSTOP-Bangなどでセルフチェックし、早めに相談を
MIZENクリニック

いびきや日中の眠気が気になる方は、お気軽にご予約ください。
夜間・土日も対応しています。

または、自宅・職場から

※ 各院の診療時間はリンク先でご確認ください

参考文献

  • Kapur, V. K., Auckley, D. H., Chowdhuri, S., Kuhlmann, D. C., Mehra, R., Ramar, K., & Harrod, C. G. (2017). Clinical practice guideline for diagnostic testing for adult obstructive sleep apnea: An American Academy of Sleep Medicine clinical practice guideline. Journal of Clinical Sleep Medicine, 13(3), 479–504.
  • Cushman, P., et al. (2026). Modified scoring criteria to improve the accuracy of the home sleep apnea test. Sleep and Breathing, 30, 52. https://doi.org/10.1007/s11325-026-03598-y
  • Javaheri, S., Barbe, F., Campos-Rodriguez, F., Dempsey, J. A., Khayat, R., Javaheri, S., Malhotra, A., Martinez-Garcia, M. A., Mehra, R., Pack, A. I., Polotsky, V. Y., Redline, S., & Somers, V. K. (2017). Sleep apnea: Types, mechanisms, and clinical cardiovascular consequences. Journal of the American College of Cardiology, 69(7), 841–858.
  • Yeghiazarians, Y., Jneid, H., Tietjens, J. R., Redline, S., Brown, D. L., El-Sherif, N., Mehra, R., Bozkurt, B., Ndumele, C. E., & Somers, V. K. (2021). Obstructive sleep apnea and cardiovascular disease: A scientific statement from the American Heart Association. Circulation, 144(3), e56–e67. https://doi.org/10.1161/CIR.0000000000000988
  • Boers, E., Barrett, M. A., Benjafield, A. V., Barnet, J. H., Ravelo, L. A., Kaye, L., Cistulli, P. A., Pépin, J.-L., Armitstead, J., Sterling, K. L., Nunez, C. M., Peppard, P. E., & Malhotra, A. (2025). Projecting the 30-year burden of obstructive sleep apnoea in the USA: A prospective modelling study.
  • May, A. M., Patel, S. R., Yamauchi, M., Verma, T. K., Weaver, T. E., Chai-Coetzer, C. L., Thornton, J. D., Ewart, G., Showers, T., Ayas, N. T., Parthasarathy, S., Mehra, R., & Billings, M. E. (2023). Moving toward equitable care for sleep apnea in the United States: Positive airway pressure adherence thresholds. An official American Thoracic Society policy statement.
  • Chung, F., Abdullah, H. R., & Liao, P. (2016). STOP-Bang questionnaire: A practical approach to screen for obstructive sleep apnea. Chest, 149(3), 631–638.
  • Patil, S. P., Ayappa, I. A., Caples, S. M., Kimoff, R. J., Patel, S. R., & Harrod, C. G. (2019). Treatment of adult obstructive sleep apnea with positive airway pressure: An American Academy of Sleep Medicine clinical practice guideline. Journal of Clinical Sleep Medicine, 15(2), 335–343.
  • Carneiro-Barrera, A., Díaz-Román, A., Guillén-Riquelme, A., Bujalance-Arenas, F., & Buela-Casal, G. (2022). Effect of an interdisciplinary weight loss and lifestyle intervention on obstructive sleep apnea severity: The INTERAPNEA randomized clinical trial.
  • Srijithesh, P. R., Aghoram, R., Goel, A., & Dhanya, J. (2019). Positional therapy for obstructive sleep apnoea. Cochrane Database of Systematic Reviews.
  • Sterling, K. L., Alpert, N., Cistulli, P. A., Pépin, J.-L., More, S., Cole, K. V., & Malhotra, A. (2024). Healthcare resource utilisation and costs in patients with treated obstructive sleep apnea.
  • 厚生労働省 (2026). 診療報酬の算定方法(D237 終夜睡眠ポリグラフィー). https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=84aa9729&dataType=0&pageNo=10
  • Philips (2021). WatchPAT300 ユーザーマニュアル. https://www.philips.com/c-dam/b2bhc/jp/resources/patient-tools/usermanual-watchpat300-202108rev2.pdf
  • 株式会社S’UIMIN. 睡眠評価装置 ナイトグラフ 製品資料.

著者:田澤 雄基(たざわ ゆうき)

医師、医学博士

院長
慶應義塾大学医学部 特任講師

 data-src=夜間内科 「MIZENクリニック」" width="1280" height="853" >