「コレステロールが高いと言われたけど、何を食べればいいの?」「卵や肉はやめるべき?」——そんな疑問を持つ方は多いでしょう。LDLコレステロール(悪玉コレステロール)は、食べ物の選択によって確実に変化します。この記事では、最新のエビデンスをもとに、LDLを下げる食べ物・上げる食べ物を具体的に整理し、食事パターン全体としての地中海食・DASH食のエビデンスも解説します。
1. コレステロールと食べ物の関係:なぜ食事が重要か
血中のLDLコレステロールは、食事の内容によって変動します。特に重要なのは、カロリー総量よりも「脂質の種類」と「食物繊維の量」です。
飽和脂肪酸(バター・ラード・肉の脂・ヤシ油など)はLDL-Cを上昇させます。一方、不飽和脂肪酸(オリーブオイル・魚油・ナッツ類)や食物繊維(オーツ麦・豆類)はLDL-Cを低下させる方向に働きます(Eckel et al., 2014;Lichtenstein et al., 2021)。
また、個別の食品単位で考えるよりも、食事パターン全体(地中海食・DASH食)としてアプローチする方が、LDL低下および心血管イベント抑制効果が高いことが示されています。以下では、まず「避けるべき食べ物」と「積極的に摂りたい食べ物」を整理したうえで、食事パターンのエビデンスを紹介します。
2. LDLコレステロールを上げる食べ物——飽和脂肪酸の多い食品
飽和脂肪酸(SFA)の摂取量を減らすことは、LDL-C低下と心血管疾患リスク減少に有効です。Hooper et al.(2020)のCochrane系統的レビューでは、飽和脂肪酸を2年以上減らした場合、心血管イベント(心筋梗塞・脳卒中など)が17%減少しました(中等度のエビデンス)。また、その削減量が大きいほど、LDL-C低下も大きく、心血管リスクもより大きく低下する「量反応関係」が認められています。
| 食品カテゴリ | 代表的な食品 | 注意点 |
| 赤身肉・加工肉 | 牛・豚の脂身、ベーコン、ソーセージ | 毎日の大量摂取はLDL上昇と関連 |
| フルファット乳製品 | バター、生クリーム、チーズ、全脂乳 | 低脂肪・無脂肪に置き換えを検討 |
| 熱帯植物油 | ヤシ油(パーム油)、ココナッツオイル | 「健康油」として広まるが飽和脂肪が多い |
| 揚げ物・加工スナック | ポテトチップス、フライドチキン | トランス脂肪酸を含む製品も要注意 |
| 洋菓子・菓子パン | バター多用のクッキー、パイ生地 | 砂糖と飽和脂肪の組み合わせに注意 |
米国心臓病学会/米国心臓協会の食事ガイドライン(Eckel et al., 2014)は、飽和脂肪酸の摂取量を総カロリーの5〜6%以下に抑えることを推奨しています。2,000kcal/日の場合、飽和脂肪酸は11〜13g以内が目安です。
3. LDLコレステロールを下げる食べ物——エビデンスのある食品
LDLを積極的に下げる食品にはいくつかのカテゴリがあります。それぞれ作用方法が異なるため、組み合わせることでより大きな効果が得られます。
3-1. ナッツ類(くるみ・アーモンド・ピスタチオ)
Del Gobbo et al.(2015)は、61件の研究(2,582人)を統合したメタ解析で、ナッツ類1回分(28.4g)/日の摂取が血中脂質に与える効果を検討しました。その結果、ナッツ1回分/日でLDL-Cが平均4.8 mg/dL、総コレステロールが4.7 mg/dL低下しました。トリグリセリドも有意に低下しましたが、HDLには有意な変化はありませんでした。
ナッツの種類別では、くるみ(21試験)・アーモンド(16試験)・ピスタチオ(7試験)・ヘーゼルナッツ(6試験)などで効果が確認されています。また、糖尿病患者では健常者より大きな効果が見られましたが、いずれの集団でもLDL低下効果は有意でした。ナッツの摂取量とLDL低下は非線形関係にあり、60g/日以上でより強い効果が示されています。
3-2. 水溶性食物繊維(オーツ麦・大麦・豆類・りんご)
水溶性食物繊維は腸内でLDLコレステロールの再吸収を妨げ、胆汁酸の排泄を促進することでLDL-Cを低下させます。米国心臓協会の科学声明(Lichtenstein et al., 2021)では、水溶性食物繊維を豊富に含む食品としてオーツ麦・大麦・豆類(大豆・レンズ豆・ひよこ豆)・果物(りんご・洋梨)・野菜(オクラ・なす)の積極的摂取を推奨しています。
植物ステロール・スタノールも食物繊維と同様にコレステロール吸収を阻害します。米国心臓病学会/米国心臓協会(Eckel 2014)では、植物ステロールを1日2g以上摂取することでLDL-Cを5〜10%程度低下させられると報告されています。
3-3. オリーブオイル——バターへの置き換えが鍵
オリーブオイル自体がLDL-Cを大きく下げるというエビデンスは限定的です。Jabbarzadeh-Ganjeh et al.(2023)の34件の研究を統合した解析では、オリーブオイル10g/日の増量当たりのLDL変化はわずか+0.04 mg/dLで、統計的に有意な変化は認めませんでした。
一方で、オリーブオイルをバターと比較すると、LDL-Cが約3 mg/dL低下しました。つまり、オリーブオイルの主な価値は「それ自体がLDLを下げる食品」というよりも、「飽和脂肪酸の多いバター・動物性油脂の代替として用いることでLDLを改善する」という点にあります。調理時の油はバターやラードからオリーブオイルや菜種油に替えることをお勧めします。
3-4. 青魚(EPA・DHA)——トリグリセリド低下が主な効果
青魚(さば・いわし・さんま・鮭)に含まれるオメガ3脂肪酸(EPA・DHA)は、主にトリグリセリド(中性脂肪)を低下させる効果が知られています。LDL-Cへの効果は小さく、むしろ大量摂取ではLDLが軽度上昇する場合もあります。ただし、LDL粒子サイズを大型化させる効果も示唆されており、心血管リスク全体を下げる観点では有益です(Van Horn et al., 2016)。
米国心臓協会では週2回以上の魚介類摂取を推奨しています。特に油の多い青魚を積極的に取り入れることで、コレステロール低下というより心血管系全体への保護効果が期待できます。
4. 食事パターン全体で考える——地中海食とDASH食のエビデンス
個別の食品よりも「食事パターン全体」でアプローチする方が、LDL低下と心血管保護の効果が高いという証拠が蓄積されています。中でも最もエビデンスが豊富なのが地中海食です。
4-1. 地中海食——Cochrane系統的レビューの結果
Rees et al.(2019)は、30件のランダム化比較試験(12,461人)を統合した解析で地中海食の心血管疾患予防効果を評価しました。一次予防において、地中海食を他の食事パターンと比較した場合、LDL-Cが-5.8 mg/dL低下しました(中等度のエビデンス)。さらに、PREDIMEDという大規模な研究(7,747人)では、地中海食+エキストラバージンオリーブオイルまたはナッツ群が低脂肪食群に比べて脳卒中リスクを40%低下させました。
地中海食の主な特徴は次のとおりです:①オリーブオイルを主な調理油として使用、②野菜・果物・全粒穀物・豆類を豊富に摂取、③ナッツ類を適度に、④魚介類を週2回以上、⑤赤身肉・乳製品・甘いものは少なく。この食事パターンは日本人の一般的な和食スタイルとも部分的に共通しており、特に魚・豆・野菜中心のアプローチは取り入れやすいと考えられます。
4-2. DASH食——高血圧と高LDLの両方に対応
DASH食(高血圧抑制のための食事アプローチ)は元々降圧目的で開発されましたが、LDL低下にも有効なことが複数の研究で示されています。DASH食の特徴は、野菜・果物・低脂肪乳製品・全粒穀物を多く、塩分・赤身肉・砂糖を少なくする点で、地中海食と多くの要素を共有しています。米国心臓協会の科学声明(Lichtenstein et al., 2021)は、地中海食・DASH食いずれも心血管リスク低減のためのエビデンスがある食事パターンとして推奨しています。
5. よくある誤解——「卵を食べるとコレステロールが上がる」は本当か?
卵1個には食事コレステロールが約200〜250mgと多く含まれており、以前は「週3個以内」などの制限が設けられていた時代もありました。しかし現在の医学的知見では、食事コレステロール(卵や貝類・内臓肉)が血中LDL-Cに与える影響は、飽和脂肪酸の影響より小さいことが分かっています。
卵を食べると血中コレステロールが「上がりやすい人(ハイパーレスポンダー)」と「上がりにくい人(ノーマルレスポンダー)」がおり、個人差が大きいのが特徴です。米国心臓病学会/米国心臓協会ガイドライン(Eckel et al., 2014)は食事コレステロールに特定の上限値を設けず、「飽和脂肪酸と砂糖を減らし、全体の食事パターンを改善すること」を優先するよう明記しています。
ただし、すでにLDL-Cが高い方・糖尿病患者・心疾患のある方は、卵の過剰摂取(1日2個以上)を継続的に行うのは避けた方が無難です。卵は良質のタンパク源・ビタミン源ですので、1日1個程度を目安に調理法(茹で卵や温泉卵)を工夫しながら取り入れることをお勧めします。
6. 食事改善だけでLDLはどこまで下がるか——受診の目安
食事の改善と運動を組み合わせた生活習慣修正で達成できるLDL-C低下には限界があります。一般的に、食事療法のみでのLDL低下は10〜20%程度が上限とされており、ベースラインのLDL-Cが140〜160 mg/dLであれば、約15〜30 mg/dL程度の低下が期待できます。
以下の場合は、食事改善と並行して医師への相談・薬物療法の検討が必要です:①LDL-Cが180 mg/dL以上でリスク因子がある、②食事改善を3〜6ヶ月続けてもLDL-Cが目標値(100〜130 mg/dL)に達しない、③糖尿病・高血圧・喫煙などの複数リスク因子を抱えている、④家族性高コレステロール血症(FH)が疑われる(若年・腱黄色腫など)。
一方、薬を開始した後も食事管理の継続は重要です。食事改善でLDL-Cを下げることで、薬の効果が上乗せされたり、将来的な用量増量を避けられる可能性があります。薬と食事、どちらか一方ではなく「両輪」で取り組むことが大切です。
まとめ——今日からできる食事改善のポイント
| ポイント | 具体的アクション |
| 飽和脂肪酸を減らす | バター→オリーブ油、全脂乳→低脂肪乳、加工肉→魚・豆腐 |
| 食物繊維を増やす | 朝食にオートミール、昼・夜に豆類(納豆・ひよこ豆) |
| ナッツを習慣化 | 1日28g(手のひら一杯)を間食に。くるみ・アーモンドが特にエビデンス豊富 |
| 地中海食スタイルを意識 | 魚・野菜・豆・全粒穀物を中心に。和食はこのスタイルに近い |
| 食事だけで不十分なら受診 | 3〜6ヶ月の食事改善で目標達成できない場合は医師へ相談 |
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参考文献
- Eckel RH, et al. (2014). 2013 AHA/ACC guideline on lifestyle management to reduce cardiovascular risk. J Am Coll Cardiol, 63(25), 2960–2984. https://doi.org/10.1016/j.jacc.2013.11.003
- Rees K, et al. (2019). Mediterranean-style diet for the primary and secondary prevention of cardiovascular disease. Cochrane Database Syst Rev, 3, CD009825. https://doi.org/10.1002/14651858.CD009825.pub3
- Hooper L, et al. (2020). Reduction in saturated fat intake for cardiovascular disease. Cochrane Database Syst Rev, 8, CD011737. https://doi.org/10.1002/14651858.CD011737.pub3
- Del Gobbo LC, et al. (2015). Effects of tree nuts on blood lipids, apolipoproteins, and blood pressure: systematic review, meta-analysis, and dose-response of 61 controlled intervention trials. Am J Clin Nutr, 102(6), 1347–1356. https://doi.org/10.3945/ajcn.115.110965
- Jabbarzadeh-Ganjeh B, et al. (2023). The effects of olive oil consumption on blood lipids: a systematic review and dose–response meta-analysis of randomised controlled trials. Br J Nutr, 129(11), 1952–1960. https://doi.org/10.1017/S0007114522003683
- Lichtenstein AH, et al. (2021). 2021 dietary guidance to improve cardiovascular health: a scientific statement from the American Heart Association. Circulation, 144(23), e472–e487. https://doi.org/10.1161/CIR.0000000000001031
- Van Horn L, et al. (2016). Recommended dietary pattern to achieve adherence to the American Heart Association/American College of Cardiology (AHA/ACC) guidelines. Circulation, 134(22), e505–e529. https://doi.org/10.1161/CIR.0000000000000462
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著者:田澤 雄基(たざわ ゆうき)
医師、医学博士
MIZENクリニック豊洲 院長
慶應義塾大学医学部 特任講師