インフルエンザによる肺炎とは?治療や対策について詳しく解説

インフルエンザは毎年多くの人がかかる身近な感染症ですが、なかには肺炎を合併し、重症化するケースもあります。特に高齢者や持病のある方では注意が必要で、「熱が下がらない」「息苦しさが出てきた」といった変化が、肺炎のサインであることも少なくありません。この記事では、インフルエンザと肺炎の関係、肺炎になりやすい人の特徴、注意すべき症状や治療の目安、そして予防のポイントについて、わかりやすく解説します。

1. インフルエンザと肺炎の関係

インフルエンザにかかると、喉や気管支の粘膜が傷つき、肺炎球菌や黄色ブドウ球菌などの細菌が肺に入りやすくなります。また、インフルエンザで体力や免疫力が消耗すると、肺炎として症状が出やすくなります。こうした細菌による肺炎を「二次性(続発性)肺炎」と呼びます。まれに、ウイルス自体が肺に広がって直接肺組織を傷つける「ウイルス性肺炎」が起こることもあります。症状だけではこの2種類の肺炎を見極めるのは困難ですが、両者とも医療機関を受診して検査と治療を受けることが望ましいという点では共通しています。

2. 肺炎になりやすい人

厚生労働省が公開している「インフルエンザ治療ガイドライン」では、インフルエンザが重症化し、肺炎を合併しやすい“ハイリスクの方”が明確に示されています。これらに該当する場合、通常より肺炎のリスクが高く、より慎重な観察と早めの受診が重要です。

  • 65歳以上の高齢者
  • 慢性の呼吸器疾患(喘息、COPDなど)を持つ方
  • 心臓病や動脈硬化などの循環器疾患がある方
  • 慢性の腎臓病、肝臓病、血液疾患、糖尿病などの基礎疾患がある方
  • 神経・筋疾患があり、飲み込みにくさや運動機能の低下がみられる方
  • 免疫力が低下している方(抗がん剤治療中、ステロイド治療中、HIV感染など)
  • 妊娠中の方
  • 介護施設や療養施設に入所している方
  • 高度の肥満がある方
  • アスピリンを長期で内服している方
  • がんの治療中、もしくは担癌状態の方

3. どんな症状が続いたら肺炎を疑うべきか

インフルエンザは、急に始まる 高熱(38℃以上) や 全身のだるさ、筋肉痛、関節痛、頭痛、寒気 といった症状が特徴です。咳やのどの痛み、鼻づまりなどの呼吸器症状も同時に現れることが多く、これらは 3〜7日ほどで落ち着くことが一般的です。
一方、症状が改善したように見えても、肺炎の合併を疑ったほうがよいサインがあります。厚生労働省の治療ガイドラインによると、インフルエンザ経過中に起こる細菌性肺炎(続発性肺炎)は 感染から5〜6日頃 に発症することが多く、呼吸器の粘膜がウイルスで傷ついた状態で細菌感染が加わる時期と重なります。

具体的には、次のような変化が見られた場合は肺炎の可能性も考慮して医療機関を受診することをお勧めします。

  • 熱が長引く、あるいは一度下がったのに再び高くなる
  • 咳が悪化する、黄色や緑色の痰が出る
  • 息苦しさが目立つ、呼吸の際にゼイゼイ音が出る
  • 強いだるさや食欲不振が続く

4. 肺炎になったときの治療内容と期間の目安

インフルエンザから肺炎を起こした場合、治療の基本は症状を和らげる対症療法と、原因として疑われる細菌に対する抗菌薬の使用です。咳や発熱があっても呼吸が比較的安定しており、食事や水分がとれる軽症の場合は、外来での治療や自宅療養が可能と判断されることも少なくありません。一方で、息苦しさが強く酸素投与が必要な場合や、高齢者、基礎疾患があり重症化のリスクが高い場合、全身状態が不安定な場合には、症状を総合的に判断したうえで入院加療が検討されます。入院中は、点滴や酸素投与を含めた全身管理とともに、必要に応じて抗菌薬による治療が行われます。回復までの期間は軽症例・入院例を問わずおおむね1〜2週間程度が目安とされますが、もともと呼吸器の持病がある方や体力が低下している方では、咳やだるさが長引くこともあります。

5. インフルエンザから肺炎になる確率

実際にインフルエンザにかかった人のうち、どの程度が肺炎を合併するのかについてはいくつかの報告があります。健康な若年〜成人では、インフルエンザが肺炎に進展する割合は1%未満〜数%程度とされ、多くの場合は合併症を起こさず自然に回復します。一方で、高齢者や基礎疾患を持つ方、免疫力が低下している方では、肺炎を合併する頻度が高くなり、数%からさらに高い割合に増加すると報告されています。インフルエンザ後の肺炎は決して誰にでも起こるものではありませんが、年齢や体の状態によっては決して珍しい合併症ではなく、特に注意が必要です。

6. 肺炎や重症化を予防するには

インフルエンザから肺炎へ進行するのを防ぐには、日常生活の中での予防が重要です。基本的な感染対策を習慣にし、十分な栄養と睡眠を確保して体調を整えることが、肺炎予防にもつながります。インフルエンザにかかった場合でも、無理をせずしっかりと休養をとることが大切です。症状が強いときや、肺炎が疑わしい症状が出た場合は、早めに医療機関を受診することで、肺炎への進行や重症化を防げることが多いとされています。

予防の柱の一つが、インフルエンザワクチン接種です。インフルエンザワクチンが肺炎そのものを何%減らすかという研究報告はありませんが、受診や入院のリスクが下がることは、複数の研究で示されています。米国疾病対策予防センター(CDC)の報告では、2024~2025年シーズンにおいて、ワクチン接種によって入院リスクが約40~80%低下したとされており、重症化を防ぐ効果が期待されています。特に高齢者や持病のある方では、年齢や体の状態に応じて、肺炎球菌ワクチンなどの接種をあわせて検討することも重要です。

抗インフルエンザ薬に関しても、肺炎そのものをどれだけ減らすかは不明瞭ですが、入院リスクを下げる効果が認められています。9つの研究結果をまとめて評価した信頼性の高い分析では、元々心肺疾患があり重症化しやすい患者が代表的な治療薬であるタミフルを内服する事で、インフルエンザに伴う入院リスクを約50%低下させられたと報告されています。

7. まとめ

インフルエンザ後の肺炎は、誰にでも起こるわけではありませんが、年齢や基礎疾患などの条件によっては決して珍しい合併症ではありません。症状の経過をよく観察し、息苦しさや発熱の再燃など気になる変化があれば、早めに医療機関を受診することが大切です。また、日常的な感染対策や体調管理に加え、ワクチン接種などの予防策を取り入れることで、重症化のリスクを下げることが期待できます。インフルエンザを「ただの風邪」と軽視せず、正しい知識をもって備えることが、肺炎を防ぐ第一歩になります。

<参考文献>
・日本医療研究開発機構. 成人の新型インフルエンザ治療ガイドライン第2版. 2017.
・日本ワクチン学会. 2025-26期の季節性インフルエンザワクチンの接種に関する日本ワクチン学会の見解. 2025.
・Shim SJ, et al. Rate of use and effectiveness of oseltamivir in the treatment of influenza illness in high-risk populations: A systematic review and meta-analysis. Health Sci Rep. 2021 Feb.
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