健康診断の結果が手元に届き、「要再検査」や「要精密検査」という文字を見て、不安に感じていませんか?「どこか悪いのかな?」「すぐに病院に行かないと危険?」と焦る気持ちになるのは当然のことですが、必ずしも「大きな病気が見つかった」というわけではありません。
しかしながら、放置するのもよくはありません。確かに、自分の健康診断結果で指摘がされてもすぐに病院に行かずに放置してしまうことは、私たち医師でもあることです。しかし、私たちは「もっと早く相談してくれればよかったのに…」と思った経験がたくさんあります。脂質異常が指摘されていたが放置していて心筋梗塞になってしまった患者さん、胃カメラで精密検査の指示がでたが半年放置したところ手術できない程度まで大きくなってしまった患者さん、などなどです。
そんな悔しい気持ちも込めて、この記事では、健康診断における「A〜E」などの判定基準の本当の意味、放置することの隠れたリスクを、医師の視点から説明します。あなたの健康を守るため、ぜひ参考にしてください。
健康診断の「A〜E判定」の意味を正しく理解しよう
A~E判定の基本的な見方
健康診断の見方で最も重要なのが「総合判定」のアルファベットです。医療機関によって多少の表記の差はありますが、一般的には日本人間ドック・予防医療学会などの基準に沿って、以下のように分類されています。
| 判定 | 段階の意味 | 必要なアクション |
| A | 異常なし | 次回の定期健康診断まで、今の健康的な生活を維持しましょう。 |
| B | 軽度異常(生活注意) | 日常生活に大きな支障はありませんが、食事や運動など少しの生活改善が推奨される状態です。 |
| C | 要経過観察・要再検査 | 数値にやや乱れがあります。数ヶ月後に「もう一度測り直す(再検査)」か、生活習慣を見直して様子を見る必要があります。 |
| D | 要精密検査・要治療 | 「病気がある」と確定したわけではありませんが、より詳しい検査で原因を突き止める(精密検査)、またはすぐに治療を開始する必要があります。 |
| E | 治療中 | すでに治療を継続している病気に関する項目です。主治医の指示に従ってください。 |
「再検査」と「精密検査」の違いとは?
「再検査」と「精密検査」の判定には微妙な表現の違いがあります。
- 再検査(C判定に多い): 「その日の体調による一時的な変動かどうか」を確かめるために、もう一度同じ検査を行うことです。
- 精密検査(D判定に多い): 異常が疑われた部分に対して、より詳しい別の検査(CT、MRI、エコー、胃カメラ、大腸カメラ、詳しい血液検査など)を行い、本当に病気があるかを突き止めることです。
「A~E判定」の意味をさらに深掘りし徹底解説
健康診断の結果表を開くと、まず目に飛び込んでくるのが「A」や「D」といったアルファベットの判定ですが、実はこの判定、健診機関がなんとなく決めているわけではありません。
日本人間ドック・予防医療学会が主導し、日本糖尿病学会や日本高血圧学会など20を超える専門学会・団体の医学的ガイドラインや専門医師の議論(パブリックコメントなど)を経て、科学的根拠に基づいて厳格に定められた共通の基準です。
それぞれの判定が「医学的に何を意味しているのか」、そして「私たちはどう行動すべきなのか」を詳しく紐解いていきましょう。
各判定の詳しい解説と「知っておくべき医療の裏側」
判定A:異常なし
- 医学的な意味: 血液などの検体検査においては「基準範囲内」または病気を予防するための「閾値(しきいち:境目の数値)未満」であることを示します。
- 医師からのワンポイント:
ここで知っておいていただきたいのは、「基準範囲は、健康な人の95%が含まれる範囲」として計算されている点です。つまり、「完全に健康な人であっても、生まれつきの体質などで5%の人は基準範囲から外れてしまう(A判定にならない)」ことがあります。一箇所だけ少し外れてB判定になっても、過度に悲観する必要はありません。
判定B:軽度異常(生活注意)
- 医学的な意味: 検査数値がAの範囲をわずかに超えているものの、「現時点で身体に悪影響を及ぼさないレベル」と医学的に判断されている段階です。画像検査でいうと「肝嚢胞(かんのうほう:肝臓にできる水が溜まった袋)」などのように、健康な人には見られないものの、近い将来に何か悪さをするわけではない所見がこれに該当します。
- 医師からのワンポイント:
「まだ大丈夫」と無視されがちですが、特定健診(メタボ健診)においては「保健指導の対象(=生活習慣を見直す絶好のタイミング)」になる範囲です。ここでブレーキを踏めるかどうかが、将来の健康を大きく左右します。
判定C:要経過観察・要再検査
- 医学的な意味: すぐに専門的な治療や大掛かりな精密検査が必要なわけではありません。しかし、「異常のレベルが無視できないほど高くなっている」状態です。
- 医師からのワンポイント:
この判定の目的は、「1年以内(あるいは数ヶ月後)にもう一度同じ検査をして、さらに悪化していないかを確認すること」です。食事や運動などの生活習慣を改善した後に、それが数値として良い方向に変化しているか、あるいは一時的な体調の波だったのかを「再検査」によって見極めます。
判定D:要精密検査・要治療
- 医学的な意味: 「異常のレベルが高度(高い状態)であり、その改善を強く要するレベル」と定義されています。
- 医師からのワンポイント:
もっとも誤解されやすいのですが、「D判定=即、大きな病気が確定した」というわけではありません。
要治療レベルであっても、病院に足を運んですぐに薬による治療が始まるケースは稀です。まずは本当に病気が隠れているのか、あるいは治療が必要な状態なのかを特定するために、CTやMRI、胃カメラや大腸カメラ、より詳細な血液検査などの「精密検査」を最初に行います。検査と治療は、健診の先にある連続した医療行為なのです。
判定E:治療中
- 医学的な意味: すぐに病院へ行く必要はありません。すでにあなたがその病気で医療機関にかかっており、治療を継続している項目です。この項目に関しては、健診結果だけで一喜一憂するのではなく、普段からあなたを診ている主治医が「現在の治療がうまくいっているか」を総合的に再評価することになります。
判定だけではなく、大切なのは「経年変化(グラフ)」
健康診断の落とし穴は、「今年のアルファベットだけを見て安心(または一喜一憂)してしまうこと」です。学会の資料でも強調されていますが、判定区分は「初めて受診する人」には非常に役立ちますが、2回目以降の受診では「過去の数値からの変化」こそが大切です。
なぜなら、人間の体には一人ひとりに「個人の基準範囲」があるからです。例えば、血液中の白血球の数や、貧血を調べる血色素(ヘモグロビン)の量などは、集団全体の基準(A判定の枠)よりも、個人の中での変動幅のほうがはるかに狭いという特徴があります。
- ずっと「A判定」の枠内(正常内)に収まっていても、去年より今年、今年より来年と、数値が毎年右肩上がりに悪化している場合、それは体からのSOSサインかもしれません。
- 逆に、毎年「C判定」であっても、過去5年間全く数値が変わっていなければ、それは病気ではなく「その人の生まれ持った体質(個人の基準値)」である可能性が高くなります。
健康診断の結果表を見る時は、ぜひ今年の判定だけでなく、「過去3年分の数値の推移」を横並びでチェックしてみてください。数値がなだらかに変化している(動いている)のを見つけたら、判定がAやBであっても、一度かかりつけ医に相談してみることをおすすめします。
なぜ放置は危険?生活習慣病の「サイレントキラー」という恐怖
「今はどこも痛くないし、体調も良いから大丈夫」と、受診を先延ばしにしてしまう方は少なくありません。しかし、健康診断で引っかかる「血糖」「脂質」「血圧」「尿酸値」などの項目は、生活習慣病の予備軍であることを示しています。
生活習慣病の恐ろしいところは、「自覚症状がまったくないまま、血管を少しずつ傷つけていく」点にあります。この特徴から、医学界では「サイレントキラー(静かなる殺人者)」とも呼ばれています。
高血糖や高血圧、コレステロールの異常を何年も放置すると、血管が硬くなる「動脈硬化」が進行します。ある日突然、脳梗塞、心筋梗塞、あるいは人工透析が必要な腎不全など、命に関わる重篤な病気を引き起こす引き金になってしまうのです。「症状がない今」だからこそ、検査を受ける最大のチャンスです。
要精密検査・再検査で病院を受診するときの流れと持ち物
普段かかっている「かかりつけ医(内科クリニック)」があればそのクリニックに相談するのがよいでしょう。予約制のクリニックの場合は、事前に「健康診断の再検査・精密検査を希望」と伝えて予約を取ります。
また、当日は、以下の3点を必ず持参してください。
- 健康診断の結果表(これが無いと、医師がどの項目を詳しく調べるべきか判断できません)
- 健康保険証(またはマイナ保険証)
- お薬手帳(現在、他のお薬を飲んでいる場合)
MIZENクリニック
健診で気になる項目があった方はお気軽にご予約ください。夜間・土日も対応しています。
または、自宅・職場から
※ 各院の診療時間はリンク先でご確認ください
まとめ:健康診断は「病気を見つけるため」ではなく「未来を守るため」
健康診断で「要精密検査」の通知が来ると、まるで病気を宣告されたような暗い気持ちになるかもしれません。しかし、本当の目的は逆です。「このままだと将来大きな病気になるかもしれないから、今のうちに少し軌道修正しておきましょう」という、体からの貴重なサイン(チャンス)なのです。
精密検査をした結果、「今回は治療の必要なし、生活改善で様子見」となることも多々あります。まずは現状を正確に把握し、安心して毎日を過ごすために、なるべく早めに(結果が届いてから1ヶ月以内を目安に)お近くの内科や当院へご相談ください。
参考文献
- https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/metabolic/m-05-001
- https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12401000-Hokenkyoku-Soumuka/0000026282.pdf
- https://www.ningen-dock.jp/other_inspection/
- https://www.ningen-dock.jp/ningendock/wp-content/uploads/2025/06/30f22555e762d6dfea2538bbe346bb48.pdf
- https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/14_32.pdf