夜、急に熱が出ると「このまま寝て様子を見るべきか、それとも今すぐ発熱外来を受診すべきか」と迷う方は多いのではないでしょうか。とくに翌日に仕事を控えている場合、判断に時間がかかるほど不安は大きくなります。
この記事でわかること:
- 夜間の発熱で「様子見」と「早期受診」のどちらが回復・重症化予防に有利か
- 発熱外来で実際に行われる検査と、診断後の出勤・休業の目安
- 会社から診断書を求められた場合の、日本の制度上の取り扱い
夜間に発熱したとき、様子を見てもいいのか
発熱の原因がインフルエンザなどのウイルス感染である場合、症状の現れ方には一定のパターンがあります。そのため、いつ受診するかによって治療の選択肢が変わることが知られています。
たとえばインフルエンザでは、抗ウイルス薬は発症から時間が経つほど効果が限定的になるとされています(Uyeki et al., 2022)。そのため、様子見を続けて受診が遅れると、本来選べたはずの治療の選択肢が狭まる可能性があります。
もちろん、すべての発熱が即受診を要するわけではありません。ただ、もし「受診すべきか様子を見るべきか」で迷う程度の症状であれば、その時点で一度相談しておくほうが、後から治療の選択肢を失わずに済みます。夜間でも検査・診察を受けられる体制があるなら、迷っている間に時間を消費するよりも、早めに専門家の判断を仰ぐことが結果的に安心につながります。
早期受診で何が変わるのか
早期受診のメリットは、大きく2つに整理できます。一つは本人の重症化予防、もう一つは周囲への感染拡大の防止です。
世界保健機関(WHO)の診療指針でも、インフルエンザが疑われる場合は発症後できるだけ早い段階での評価・治療開始が推奨されています(Vandvik et al., 2026)。一方で、症状が軽い急性呼吸器感染症に対して抗菌薬を直ちに使うか延期するかを比較した研究では、安易な早期抗菌薬投与にはむしろ注意が必要であることも示されています(Spurling et al., 2023)。つまり「早期受診」が目指すのは、闇雲な薬の使用ではなく、適切な診断に基づいた治療判断を早めることです。
さらに、インフルエンザや新型コロナはいずれも発症直後の数日間がもっとも感染力が高い時期にあたります(Stone et al., 2025)。この時期に診断がつかないまま出勤や外出を続けると、家庭内や職場での感染拡大につながりやすくなります。早期受診は、自分自身のためだけでなく、周囲の人を守る行動でもあるのです。
夜間の発熱外来で行われる検査と診察
夜間の発熱外来では、まず問診と身体診察によって重症度が確認されます。高熱の持続期間、呼吸の状態、意識の状態などは、緊急性を判断するうえで重要な手がかりとなります。
必要に応じて、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の迅速抗原検査が行われます。迅速検査は、救急・夜間外来の現場において診断の確定や治療方針の決定を早める手段として活用されており(Stamm et al., 2023;Benirschke et al., 2019)、結果が早く出ることで、その場で治療方針や仕事の予定を含めた今後の見通しを相談できる利点があります。実際に、迅速なインフルエンザ検査の導入によって不要な追加検査や入院が減少したとの報告もあります(Chu et al., 2015)。
ただし、抗原検査には注意点もあります。発症直後はウイルス量がまだ十分に増えていないため、検査が陰性でも感染を否定できない場合があります(Hayden et al., 2024;Peeling et al., 2022)。そのため、症状が強いにもかかわらず検査が陰性だった場合は、自己判断で感染を否定せず、翌日以降の再検査や医師の判断を優先することが推奨されます。
診断が出たら何日休む?インフルエンザ・コロナの目安
診断がつくと、次に気になるのは「いつから仕事に戻れるか」です。インフルエンザについては、学校保健安全法施行規則第19条で出席停止期間が「発症した後5日を経過し、かつ解熱した後2日(幼児は3日)を経過するまで」と定められています。これは学校向けの基準ですが、社内に明確な規定がない会社では、人事担当者や本人がこの基準を職場復帰の目安として援用しているケースが多く見られます。
新型コロナについては、2023年5月の5類感染症への移行にともない、法律に基づく外出自粛は求められなくなりました。現在は厚生労働省が目安を示すのみで、発症後5日間は外出を控え、5日目以降も症状が続く場合は解熱・症状の軽快から概ね24時間が経過するまで様子を見ることが推奨されています(厚生労働省, 2023)。インフルエンザのような明確な「出勤可能日」の規定はないものの、社内ルールが整っていない場合は、学校保健安全法の基準(発症後5日+症状軽快後1日)が参考値として用いられることがあります。
いずれの場合も、自己判断だけで復帰時期を決めるよりも、診察時に医師と相談しておくと安心です。【要エビデンス:日本国内の企業における職場復帰基準の実態を示す大規模調査は今回確認できておらず、厚労省の公式情報を中心に記載しています】
診断書は本当に必要?日本の制度と会社対応
「会社に診断書を出すよう言われた」というケースは少なくありません。しかし、インフルエンザや新型コロナにかかった際の診断書・治癒証明書の提出は、法律上義務付けられているものではありません。
厚生労働省は、発熱外来など医療機関のひっ迫を避ける目的で、企業や学校に対して検査結果や治癒証明書を求めないよう周知を行っています(厚生労働省, 2022)。実際の対応は会社の就業規則によって異なり、提出を求めるかどうかは各企業の判断に委ねられています。
一方で、診断書の取り扱いに関する医療現場側の認識調査では、診断書(sick note)の発行が受診行動や復帰判断に一定の影響を与えていることも示されています(Hayman et al., 2021)。会社から診断書を求められた場合は、就業規則を確認したうえで、受診時に必要性を医師に相談するとよいでしょう。
無理に出社するとどうなるか
発熱があっても「休めない」という理由で出社してしまう状態は、プレゼンティーズムと呼ばれます。研究では、有給休暇や在宅勤務制度が利用しやすい環境ほど、発熱時に休養を選びやすいことが報告されています(Ahmed et al., 2020;Ahmed et al., 2023)。
反対に、無理に出社を続けると回復が遅れるだけでなく、職場内での感染拡大につながるリスクも指摘されています(Edwards et al., 2016)。米国の職場における新型コロナ対応の指針でも、症状がある従業員の出勤継続は感染対策上のリスクとして明確に位置づけられています(Taylor et al., 2021)。早期受診によって診断と見通しを得ることは、結果的に「いつまで休めばよいか」を明確にし、無理な出社を避ける判断材料にもなります。
まとめ
夜間の発熱は、様子を見るべきか受診すべきか判断に迷う場面です。しかし早期受診には、治療の選択肢を広げ、重症化と感染拡大の双方を防ぐという根拠があります。診断がついたあとの出勤・休業の判断や、診断書の取り扱いについても、自己判断より医師への相談を優先することをおすすめします。MIZENクリニックでは、都内3院(豊洲・市ヶ谷・池尻大橋)で夜間も発熱の診療を行っており、迅速検査による当日の診断や、必要に応じた診断書の発行にも対応しています。今夜発熱がある場合は、無理をせず早めにご相談ください。
MIZENクリニック
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夜間・土日も対応しています。
または、自宅・職場から
※ 各院の診療時間はリンク先でご確認ください
参考文献
- Uyeki, T. M., Bernstein, H. H., Bradley, J. S., et al. (2022). Clinical Practice Guidelines by the Infectious Diseases Society of America: 2018 Update on Diagnosis, Treatment, Chemoprophylaxis, and Institutional Outbreak Management of Seasonal Influenza. https://doi.org/10.1093/cid/ciy866
- Vandvik, P. O., et al. (2026). Summary of WHO clinical practice guidelines for influenza. [リンク未取得]
- Spurling, G. K. P., Del Mar, C. B., Dooley, L., et al. (2023). Immediate versus delayed versus no antibiotics for respiratory infections. Cochrane Database of Systematic Reviews. https://doi.org/10.1002/14651858.CD004417.pub6
- Stone, M., et al. (2025). Risk period for transmission of SARS-CoV-2 and seasonal influenza: a rapid review. [リンク未取得]
- Stamm, A. W., et al. (2023). The influence of rapid influenza diagnostic testing on clinical decision-making for patients with acute respiratory infection in urgent care. [リンク未取得]
- Benirschke, R. C., et al. (2019). Clinical impact of rapid point-of-care PCR influenza testing in an urgent care setting: A single-center study. Journal of Clinical Virology. [リンク未取得]
- Chu, S., et al. (2015). Impact of rapid influenza PCR testing on hospitalization and antiviral use: a retrospective cohort study. [リンク未取得]
- Hayden, M. K., et al. (2024). The Infectious Diseases Society of America guidelines on the diagnosis of COVID-19: Antigen testing (January 2023). [リンク未取得]
- Peeling, R. W., et al. (2022). Diagnostics for COVID-19: moving from pandemic response to control. The Lancet. [リンク未取得]
- Ahmed, F., et al. (2020). Paid leave and access to telework as work attendance determinants during acute respiratory illness, United States, 2017–2018. Emerging Infectious Diseases. https://doi.org/10.3201/eid2606.190743
- Ahmed, F., et al. (2023). Work attendance with acute respiratory illness before and during COVID-19 pandemic, United States, 2018–2022. [リンク未取得]
- Edwards, C. H., et al. (2016). Influenza in workplaces: transmission, workers’ adherence to sick leave advice and European sick leave recommendations. European Journal of Public Health. [リンク未取得]
- Taylor, C. A., et al. (2021). Safely returning America to work part II: Industry-specific guidance. [リンク未取得]
- Hayman, R., et al. (2021). Emergency physician attitudes towards illness verification (sick notes). [リンク未取得]
- 厚生労働省 (2022). 新型コロナウイルス感染症及び季節性インフルエンザに係る医療機関のひっ迫等を回避するための周知について. https://www.mhlw.go.jp/content/001008879.pdf
- 厚生労働省 (2023). 新型コロナウイルス感染症の患者等への対応(5類感染症移行後の療養に関する考え方). https://www.mhlw.go.jp/stf/corona5rui.html
- 学校保健安全法施行規則第19条. https://laws.e-gov.go.jp/law/333M50000080018/