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インフルエンザ治療薬の比較・違いとは?詳しいポイントに分けて解説

インフルエンザの薬について

検査でインフルエンザが陽性となった場合や、インフルエンザみなし陽性(インフルエンザの患者と接触があり、症状があり、明らかにインフルエンザ陽性と考えられる)の場合、発症から48時間以内であればインフルエンザ治療薬を使用した方がよいとされます。また、発症から48時間を過ぎていても、特定の条件を満たす場合はインフルエンザ治療薬が推奨されます。少しでも症状を和らげるために、ぜひ医師に相談してください。

インフルエンザの治療薬には様々な種類があり、特徴が少しずつ異なります。実際にご自身で使用される際は、必ず医師に相談し、適切な治療薬を処方してもらうようにお願いいたします。インフルエンザ治療薬の種類と特徴についてご紹介していきます。

インフルエンザ治療薬の比較表

インフルエンザ治療に使う代表的な薬(タミフル、リレンザ、イナビル、ラピアクタ、ゾフルーザ)について、主要な特徴を一覧表で比較します。

 

商品名 タミフル リレンザ イナビル ラピアクタ ゾフルーザ
薬剤名(一般名) オセルタミビルリン酸塩 ザナミビル水和物 ラニナミビルオクタン酸エステル水和物 ペラミビル水和物 バロキサビル マルボキシル
投与経路 経口 吸入 吸入 点滴 経口
処方形態 カプセル,粉薬 吸入器 吸入器,ネブライザー 点滴製剤 錠剤,粉薬
主な作用機序 ノイラミニダーゼ阻害薬 ノイラミニダーゼ阻害薬 ノイラミニダーゼ阻害薬 ノイラミニダーゼ阻害薬 キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬
投与回数・期間
(成人の標準)
1日2回・5日間 1日2回・5日間 1回のみ 基本1回のみ 1回のみ
対象ウイルス A型・B型 A型・B型 A型・B型 A型・B型 A型・B型
保険適応 2001年 2001年 2010年 2010年 2018年
効果の特徴 発熱・全身症状の期間短縮、合併症・重症化リスクの低減が期待される。 吸入後、速やかに気道で作用する。発熱期間の短縮・症状改善が期待される。B型によく効くとされている。 1回の吸入で治療が完結するため、飲み忘れが起こりにくい。 経口・吸入が困難な症例や入院・重症例で用いられる。1回投与で血中濃度を高く保つことができる。 1回の内服でウイルス量を急速に低下させる。しかし、一部で耐性ウイルス出現が問題となっている。
主な副作用・注意点 吐き気・嘔吐・下痢・腹痛などの消化器症状、頭痛などの副作用がでることがある。異常行動などとの因果関係は証明されていない。 吸入時の咳、咽頭違和感、まれに気管支けいれんなどの副作用が出ることがある。重い気管支喘息やCOPDでは慎重投与が必要とされる。 吸入時の咳、気道刺激感、まれに気管支けいれんなどの副作用がでることがある。吸入操作が難しい小児・高齢者では注意が必要になる。 下痢・悪心・肝機能異常や、注射部位反応などの副作用がでることがある。腎機能に応じた用量調整が必要な場合がある。 下痢・吐き気・頭痛・肝機能数値異常などの副作用がでることがある。小児や基礎疾患のある患者では耐性リスクに留意が必要。
薬価の目安
(成人の治療全体)
先発は約1,900円、後発は約1,100円 約2,300円 約4,200円 約6,200円 約4,900円

 

インフルエンザ治療薬の違いをポイントに分けて詳しく解説

1. 投与経路による比較

■内服薬(タミフル、ゾフルーザ)
内服薬は、在宅・外来で最も使いやすく、小児から高齢者まで幅広く投与可能です。しかし、副作用で吐き気・嘔吐など消化器症状がやや出やすいと言われています。また、嘔吐が続く場合などでは、内服薬も吐いてしまうため、効果を発揮できない可能性があります。

■吸入薬(リレンザ、イナビル)
吸入薬は、気道局所で高濃度に作用し、全身性の副作用が比較的少ないとされています。しかし、吸入手技が必要で、小児・高齢者などはしっかり吸入ができない場合があります。また、喘息やCOPDなど重度呼吸器疾患患者では使用困難あるいは禁忌とされます。

■点滴(ラピアクタ)
静注薬は、経口・吸入が困難な患者、重症例、嘔吐の強い症例などで確実に投与できます。しかし、腎機能に応じた用量調整も必要であり、基本的には入院で使用し、外来での投与は現実的ではありません。

2. 作用機序の違い

抗インフルエンザ薬は大きく「ノイラミニダーゼ阻害薬」と「キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬」に分類されます。

■ノイラミニダーゼ阻害薬(タミフル、リレンザ、イナビル、ラピアクタ)
インフルエンザウイルス表面の「ノイラミニダーゼ活性」というものを阻害することによって、ウイルスに感染した細胞から新しくウイルス粒子が遊離しにくいようにすることで増殖を抑制します。A・B 型インフルエンザに有効とされ、長年の使用されてきた実績が強みです。標準治療として各種ガイドラインで第一選択群として位置づけられています。

■キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬(ゾフルーザ)
ウイルスRNA依存RNAポリメラーゼ複合体の一部である「キャップ依存性エンドヌクレアーゼ活性」というものを選択的に阻害することで、ウイルスmRNA合成の初期過程を抑制します。単回投与でウイルス量を急速に減少させる一方、耐性ウイルス出現が国際的に報告されており、日本では「原則としてノイラミニダーゼ阻害薬を優先し、使用は慎重に」とされています。

3. 投与回数による違い

■複数日投与(タミフル、リレンザ)
5日間継続が必要な治療薬では、アドヒアランス(飲み忘れ・吸い忘れ)の問題が生じやすいですが、薬による副作用が疑われる場合はその時点で中止することもできます。

■単回投与(イナビル、ラピアクタ、ゾフルーザ)
飲み忘れなどによる影響がなく、一度の内服・投与で完結するのが強いメリットです。

4. 使用実績による違い

■タミフル
2000年代初頭から世界的に広く使われており、「使用経験が最も蓄積されている薬剤」です。 持病があるリスク患者や入院中の患者、妊婦などの様々な状況に応じたデータも多く揃っており、重症例でも第一選択とされることが多いです。

■リレンザ・イナビル
吸入薬としての実績があり、特にリレンザは海外でもタミフルと並ぶ標準薬とされています。イナビルは日本での使用経験が中心で、タミフルが効きにくい場合の選択肢としても評価されています。

■ラピアクタ
日本での静注薬としての使用経験が豊富で、経口困難例や重症例で推奨されています。一方、外来で使用される例は少ないです。

■ゾフルーザ
比較的新しい薬剤であり、日本小児科学会指針は「有効性は示されているが、耐性の問題や長期的安全性を考慮し、基本的にはノイラミニダーゼ阻害薬を優先」との立場をとっています。また、重症・入院例ではタミフルを推奨されます。

5. 副作用による比較

厚労省・日本感染症学会は、タミフルの中枢神経症状(異常行動など)の報告について、「インフルエンザ自体による影響が大きく、治療薬との因果関係は明確でないが、投与中の小児・若年者には転落・飛び降りなどへの注意が必要」としています。「少なくとも発熱から2日間は、保護者等は転落等の事故に対する防止対策を講じる」べきとされています。タミフルを内服することで、異常行動が減るとのデータもあります。
吸入薬は気管支喘息・COPDなどの呼吸器疾患を持病としてお持ちの方では注意が必要です。また、静注薬は腎機能障害・肝機能異常が出ることがあります。

6. 費用による比較

後発品(ジェネリック)のあるタミフルが費用面では最も有利と思われます。

7. 効果による比較

どのインフルエンザ薬が一番早く症状を楽にしてくれるかが最も気になるところかと思いますが、薬剤による有効性の差はほとんどないというデータが示されています。 いずれの抗インフルエンザ薬も「症状改善までの時間を半日~1日程度短縮する」レベルの効果が再現性高く示されており、重症化リスクが高い患者では入院や合併症を減らすとされています。

薬剤同士の直接比較では、ゾフルーザやリレンザが一部の評価項目(症状改善時間、ウイルス排泄停止、合併症・有害事象の少なさなど)で有利とする解析があるものの、その差は「数時間」「差は小さい」といった程度であり、ガイドライン上はどれか一剤のみをおすすめするというよりは、年齢・基礎疾患・投与経路・耐性リスクなどを総合的に評価して選択することが勧められています。

結局どの薬を選べばよいのか

すべての患者さんにとって「絶対的な正解」となる唯一の薬はありません。年齢、持病の有無、ライフスタイル(飲み忘れの心配など)、費用面を考慮し、医師と相談の上で決定することが大切です。近隣の医療機関にお気軽にご相談ください。

参考文献

  • https://www.kansensho.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=37
  • https://www.mhlw.go.jp/content/000574837.pdf
  • https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20241202_2024-2025_infuru_shishin.pdf
  • https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000190793.pdf
  • https://www.cdc.gov/flu/hcp/antivirals/summary-clinicians.html
  • https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/0000101595.pdf
  • https://jamanetwork.com/journals/jamaneurology/fullarticle/2837165
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